NHL Washington CapitalsのTom Wilsonが20試合の出場停止を14試合に短縮されて即時出場可能になっています。Tom Wilsonは再三再四の頭部への攻撃でNHLから20試合出場停止とされその期間中のサラリーも支払われないという処罰を受けました。その後見直しを要求するもNHLコミッショナーから却下され、直後に仲裁人への上訴をしていました。仲裁人制度はNHLの労使協定で定められている制度なので、選手側の権利としては手続き上問題ありません。

問題はその仲裁人という人物が過去NFLやMLBでも仲裁人でありながらMLBから解雇された過去を持つ人だからでしょうか。ほぼ常に選手側に有利に出場停止期間を削ってきた実績をもつ人、とされます。MLB時代にはRyan BraunのPED使用の問題ではBraunに有利な裁定を下したと。その後、MLBは同氏を仲裁人から解雇。MLBは解雇にからんでコメントを避けています。またNHLでは同氏は家庭内暴力行為で出場停止を受けた Nashville PreditorsのAustin Watsonの27試合を先月18試合に短縮したばかり。

他のジャンルで家庭内暴力行為への強い罰則適用の事例が増えて定着してきている中、Watsonの出場停止短縮は逆行で珍しいかなと思っていたわけですが、これに今回のTom Wilsonも選手側有利な裁定。脳震盪防止というのはアメスポナンバーワンNFLでは最優先事項、NHLでもそうであろうと思っていたのですが、これもトレンドに逆行する出場停止短縮という裁定が出たことで、仲裁人の資質問題がクローズアップされることに。

家庭内暴力の問題は社会的要請を受けて、プロメジャースポーツが取り組んでいる問題ですね。言い方は悪いですがNFLやNHLとは直接は関係のない問題を、社会の構成員の一員として目立つプロスポーツが広告塔となって社会に広報啓蒙するために厳罰処分して見せしめにしているという図式だと思います。
一方、脳震盪問題はより内部の選手たちの保護・引退後の健康被害を未然に防ごうというより直接的な問題です。選手たちは潜在的な被害者という問題とも言えます。今回のWilsonのケースでNHL選手協会が動いて仲裁人裁定に持ち込んで「勝利」したわけですけど、これは選手たちにとって本当に勝利なのかな?という疑問を感じます。Wilsonは105試合で4度の頭部への攻撃行為を咎められて今回の処分を食ったわけです。こういう常習的な悪質行為を禁ずる・減ずることで利益を受ける選手の方が多いはずなのに。本当に選手会はこの処分を不満に思って仲裁を求めていたのか?という点がよくわかりません。