先日のポストシーズンに入ってからのどの試合だったかで、先発投手が5イニングを投げきらないままで降板するも、試合後に識者から絶賛されていて、その続きで先発投手は5イニングを投げきらないと勝利投手の権利を得られないという公式ルールがあるがそれは現実に合っていない、勝利投手に値するのはその先発投手だったということを議論していました。MilwaukeeのWade Mileyについてだったかも。
またHouston AstrosがALDSをスイープ3連勝で決めた試合ではエースのDallas Keuchelが5イニングかっきりで降板。こちらは降板時点でClevelandが2−1でリード、勝ち投手となる可能性はなく負け投手になる可能性ありの状態での降板でしたが、十分に役目を果たしたと評価されていました。
緊張感の高いポストシーズンとレギュラーシーズンでの先発の5イニングはその負担は相当に違うわけです。レギュラーシーズンにおいては年間どれだけのイニング数をカバーできるかは先発投手たちにとっては大事な役目であり指標ですが、ポストシーズンにおいてはその尺度はあまり意味がないわけです。

ざっとの話で言うと年間30試合先発平均5イニングを投げれば150イニング、規定投球回数に近いが足りない。6イニングなら180イニングで規定投球回数到達。先発機会を3度とばして27度なら6イニング平均が規定投球回数ちょうどの162イニング。つまりはほぼ先発機会を年間通して全うして責任6イニング以上を投げる投手のみが規定投球回数に達して公式記録に様々な数字が残り、好投手と認識される。
しかしそれって実態に合ってるのでしょうか。投手の分業制は先発投手の重要性を減じている。またスポーツ医療技術が発達して過去なら見過ごされていた負傷が負傷として認識されて戦線離脱するのが常態となっている現在のMLBの投手たち。シーズンのある一定部分を欠場してしまえば先発投手も規定投球回数には届かない。届かないゆえに防御率のタイトルから除外される。昔ならシーズン中に欠場時期があっても先発投手は良ければ7回なり投げるのが常識だったゆえに規定投球回数という基準は大きな問題なく成立してきていたわけです。防御率のタイトルが制定されたのは100年以上前のこと。昨今のセイバーメトリクスの発達での選手評価方法の見直しの波の中でもこの古典的投手成績は選手評価の指標として順当とされて今も生きています。同じく古典的なスタッツである打率や打点や投手の勝利数が選手評価の基準として不適当とされたのとは対称的です。

冒頭に述べた5イニングの勝利投手の権利は、その評価を下げた数字である勝利数に関わる基準なので選手の能力評価の数字としては不適当なのはそうなので異論はないのですが、その一方で選手の勲章としては今も生きているという意味で試合に影響を与えている。監督も(意識してか無意識か)5イニング終了まで先発投手を引っ張ろうとするし、先発投手本人もそれを基準に試合に臨む。マスコミも5回もたずの降板を失敗と捉えて報じる。でもそうなのか、というのが今回のお題であります。時代が変わったのだからこの5イニング縛りは変更を考える余地があるのではないか、というわけです。または規定投球回数というのは今の実態に合った足切り点なのか。

当ブログでたびたび参照する話題として、昨オフのNew York Metsの先発投手に打線3巡目は投げさせないというプランがありました。これを最初にMetsが打ち上げた通りに本当にやってしまうとほとんどの先発投手には勝利投手の権利は発生しません。制度上負けは付くけど勝ちはつかない。防御率は好成績になると推測されますが規定投球回数には達することは不可能で防御率タイトルも望めない。先発を任されるのはMLBの中でも好投手たちのはずですが、そういう選手たちが将来的に勝利も重ねられない防御率タイトルの可能性もない仕事を受け入れられるのかなというのが気になります。
(Metsに関しては実際には2018年もMetsは4人の先発投手が従来通りに長いイニングを投げてシーズンを終えており、打順3巡目は投げさせないという案は問題提起しただけになってます。大手のマスコミであまりその案の可否を議論したのも見たこともありません)


と、ここまでこの記事を書いて数日ほったらかしにしておいたところへ、今日のNLCS第1戦となりました。Los Angeles Dodgers@Milwaukee Brewers戦。Dodgersの追い込みで緊張感の高い終盤となりましたがなんとかBrewersが6−5で逃げ切って勝利、レギュラーシーズンの終盤から12連勝としてます。
この試合Milwaukeeは先発投手Gio Gonzalez32球2イニングで降板。その後結果的に勝ち投手となったBrandon Woodruffが2イニング(自らホームランを打つオマケ付き)を投げた後、今プレーオフの最大の話題の投手剛球左腕サイドハンダーJosh Haderを5回から投入。3イニング46球はHaderにとって今季最多投球数。Haderが登場した時点で5−1、降板した時点で6−1でMilwaukeeがリード。Milwaukeeの監督Craig Counsell、思い切って3イニング目引っ張ったなあ、勝利に執念見せてるなあと思いました。結果的にはこの3イニング目を引っ張ったのは正解だったことになるんでしょう。3イニング目の7回表のDodgersはその前2イニングよりも明らかにバットコンタクトが良くなってきていてMilwaukee側から見れば危なっかしいHaderの3イニング目でしたが、その後の8回9回に4投手をつぎ込みながら4失点したのと比較すればHaderに3イニング目を投げさせておいて良かった、ということになりそうです。
勝っている試合で5回3番手に出てくる投手が一番良い投手というのは従来の投手起用の常識が崩れている昨今のMLBの投手起用法を象徴するような試合だったでしょうか。
Dodgersは打線の厚みがあるのでこういう追う展開だと迫力ありましたね。