サッカーW杯の試合のない日に妙な変化球があらぬ方向から飛んできました。元女子サッカー米代表GKだったHope Soloが(たぶん狙って)議論を呼びそうな発言をして(企みどおり)各所でその発言が取り上げられています。”Soccer, right now, has become a rich, white kid sport.” 
Soloは今年2月の米サッカー協会の会長選に立候補。全候補中知名度では抜群のナンバーワンだったのですが票を集めることはできずに落選しています。この時期にこんな発言をしてきたということはきっと次回の会長の改選に向けてのキャンペーンを始めたということなのでしょう。現在36歳。NWSLのSeattle Reignからも2016年シーズン途中で離脱してその後はプレーしていない。一時点では女子米代表の中心メンバーで人気選手だったSoloですが選手としてはフェードアウトで終了。人望もないため女子サッカー界での生き残りも難しく、今となっては次の道が見えない状態でもあり、炎上狙いで一発発言してみた感じは否めません。

ただ発言の中身はそれなりに意味のある部分もあるんでしょう。ニュースなど短信で取り上げられてしまうのは表題にした部分だけになってしまうんですが、その前段でSoloが主張しているのは、サッカー強化が先鋭化して自分の子供に投資できる経済力を持った親の子だけが生き残り、いまのままでは幅広い人口各層を吸い上げられなくなってきている、という問題を取り上げています。
Soloが念頭に置いているのは女子米代表チームの構成のことでしょう。ほとんどが白人選手で占められている。アメリカの総人口に18%程度を占めるヒスパニックや、13%とされる黒人、アジア系6%、この比率よりはるかに米女子代表におけるマイノリティの割合は低い。24人のロースターだとすればヒスパニックは3-4人含まれてよいし黒人選手も3人ほどいてざっと総人口比と同じ割合となります。でも実際は女子米代表は大半が白人選手。女子代表を例にしてみましたが、男子では女子ほど顕著ではないものの白人比率は他のメジャースポーツと比較して高めと言えそうです。
またSoloの出身経歴がそう言わせるのでしょうが、経済力がない家庭の子はいまのサッカー界では力を伸ばせないという点も同時に指摘してます。Soloの家庭はほかの代表の選手と比較して恵まれていなかったとされます。その辺りの屈折した心理もあって表題のような発言になってしまったようです。

で、これを言ってどうなるのか。Solo側の思惑を想像すればそういったマイノリティの会員票をまとめる発言を積極的にして次期会長選を目指すつもりかなという感じでしょうか。

サッカーの人気調査において女子米代表の人気の比率は相当に大きい。多くの調査が示す通りアメリカでのサッカー支持者の過半数が女性からという事実からもそれは強く示唆されています。若い白人女性が自分を重ねて応援できる対象としてのサッカー女子米代表は他にライバルがいません。他に女子のプロスポーツというとバスケ、テニス、ゴルフといったところでしょうが、バスケやテニスには白人スターが欠けている。唯一可能性があるとすれば白人比率が高めのバレーボール辺りでしょうがアメリカでのバレーボールの観戦スポーツとしての人気は極限定的。
で、現在女子スポーツ観戦需要の取り込みに唯一成功しているサッカー女子米代表が有色人種化して人気を保てるのかというのは問題がセンシティブで議論しにくい問題です。女子米代表はピッチ上でかつての圧倒的な地位から滑り落ちつつあり、ただでさえ以前のように圧勝して喝采を浴びるような活動はできない可能性があり、それだけでも近い将来の人気低下が懸念される中、コアのファン層が自己を重ね合わせている代表の有色人種の比率が高くなったときに彼女たちファンはファンとして残ってくれるのかどうか。昔みたいに強くもなければ自分を重ね合わせられる年格好の選手も減るとなったらどうなるのか、ということです。

繰り返しますがアメリカで「サッカー人気」と言った場合に占める女性の支持は過半数であり、ここが崩れるとサッカー人気と呼ばれるものの全体の数字が目に見えてダメージを受ける可能性もあるので、けっこうな問題なのです。