サッカーMLSの新シーズンが今週末から開始。23年目のシーズンとなります。今季はLos Angeles FCが新チームとして新たにMLSに参加、23チーム構成に。MLSは近年新チームが次々と各地で成功しており、リーグ全体として上げ潮なんですが、今季参加のLos Angeles FCはどうなるか。最近のMLS新規チームの中では一番の逆風化でのリーグ参加となるように見えますが、他とは一味違うブランド戦略でどうファンを取り込んでいけるのか見守っています。これが成功するようだとMLSに限らず、他のリーグの大都市の2チーム目設立のプランに影響を与えるかもしれません。

まずどう逆風か。Los Angeles FCの設立が発表されたのが2014年。当時同市内にあったChivas USAの解散と入れ替わりでの参入発表でした。同市内のMLSにはLos Angeles Galaxyがリーグ創設から存在。後発だったChivas USAはStub Hub StadiumでGalaxyと同居。MLSのトップクラスの観客動員力を誇っていたGalaxyと比較すると寂しいファンの動員状況で、Chivas USAが設立当初から支持獲得を目指していたサッカー熱の高いメキシコ移民からの支持は得られず、別の法律問題も噴出したことからChivasという実験は失敗で撤収。完全に模様替え出直しでLos Angeles FCの設立に走ったのでした。

2014年当時のLAのスポーツマーケットは4年後の今と大きく違いました。なんと言っても最大の違いはNFLのLA回帰でしょう。2015年1月にNFLがLos Angeles市場への帰還を正式表明。その時点ではどういう形になるかは不明でしたが様々な紆余曲折を経て、ChargersとRamsが現在までにLA移転を完了。そのチーム移転のあーだこーだは今から考えればセルフ炎上の大きな宣伝になって毎週のように大きくスポーツメディアで取り上げられました。両チームが使用する美麗な最新設備を備えた新スタジアムも建設中です。現時点での名称はLos Angeles Stadium at Hollywood Park。2028年の同市開催の夏季五輪のメインスタジアムとして開会式およびサッカーの試合もここで行われる見込みです。

このNFLのLos Angeles再進出の進展のすべてがMLS Los Angeles FCの設立発表後に起こったことです。MLS Los Angeles FCへの出資者からしたら不安を感じたのではないでしょうか。LAでのスポーツの話題の多くは新参入ChargersやRamsに乗っ取られ、MLSが各地で得意としてきた新スタジアム効果もNFLの最新鋭大型スタジアムへの期待でかなりの部分消し飛んでます。MLSとNFLのシーズンは大きく重なるわけではないですが、シーズンチケットのセールスという大事な戦場でNFLの迅速市場参入で事態は急変。なにしろRamsとChargersがそれぞれ7万席以上を新規のシーズンチケットをLA地区のスポーツファンに売ろうとしているわけですから。
そもそもNFL再参入がなくてもLAにはスポーツチームは多い。シーズンの重なるMLBに2チーム、NBA2チームにNHL。MLSでも古参Galaxyがいる。競争は激しいです。

悲観すべきことばかりではありません。22,000席のLos Angeles FCの新スタジアムBanc of California Stadiumのうち約17,500席は既にシーズンチケットとして売れているとされますからその面では健闘しているはず。またLAFCのロゴ付きのアパレルを着たファンが既に街をかなりの数闊歩しているのが目撃されているとか。それがファンなのか、LAFC側の仕込みなのかはここでは問わないです。後者だとしてもその努力は買うべきでしょうから。
LAFCのロゴやアパレルは非スポーツファンにも売ることを意識したのだと言います。渋めのゴールドと黒。Angelの羽根を加えたロゴ。これ、なんでもNFL Oakland Raidersの成功を意識して開発されたのだとか。Raidersの黒&銀、そしてあの片目のアイパッチのロゴ。あれ、スポーツファンではなくてもファッションとして海外で目にすることがあるわけですが、そういうモノ自体として訴求力のあるものを作ろうというコンセプトでイメージカラー選びやロゴ開発から始めたと。そういう観点で言うとNFLがLA地区に再参入したもののRaidersがLAに来なかったのはLAFCとしては幸いだったのかも。
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カラーはNHLの今季からの新規参入チームであるVegas Golden Knightsのチームカラーに似ている。現在のアメリカではこの色合がLAFCがターゲットとする層に一番ウケるカラーということなんでしょう。一般的に不況の時期は原色など派手な色が、景気が良いと中間色がウケるということが言われます。その点でも景気好調な現在のアメリカではこの程度の抑え気味のカラーがいいのかもしれません。(NFL Ramsも色合いを抑えめに変更してます)
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ここでピンときた方もいらっしゃるかと思います。このカラーで誰を客層として想定しているのか。NHL Vegasと同じ客層を狙っている?どうもそういうことのようなのです。

過去一般的に言ってMLSの客層とNHLの客層は違いました。NHLの方はチケット単価が遥かに高いこともあって売る相手は経済的に安定した大人です。MLSの方は例えば観客動員力でMLSをリードするSeattle Soundersで見ても客層は比較的若い。または初期のMLSチームがターゲットとしてきた層はファミリー客だった。伝統的には野球MLBが得意としていた層でした。MLSのチケットの設定価格は抑えられていた(ざっとマイナーリーグベースボール並)のでその年齢層・経済レベルの層でも買えた。
ところが今回のLAFCはもっとアダルトな層に向けてサッカーチームを売り込もうとしているという意味で目新しいのです。それこそ過去NHLが掴んでいたような層に。

こうなってくるとLos Angeles FCという名称も意図的に色のつかない名前を選択したということになります。私は最初にチーム名の発表を聞いたときに、Los Angeles FCじゃネットでの検索で埋もれてしまうんじゃないかと思ったのですが、これもまたイメージ戦略としてあえて、ということのようです。


あともう一つLos Angeles FCの不安(と同時に期待)の新機軸は、同チームの試合の地元圏での放映権をYouTube TVが独占保持していることです。元YouTubeの役員がLos Angeles FCの役員として参加している関係でこうなっています。YouTube TVはLAFCの胸ロゴスポンサーでもあります。

4大スポーツやMLSの各チームは地元TV局との契約で基本的に全試合中継を維持していると思いますが、Los Angeles FCは初めてそうではない道を選んでます。インターネットベースのYouTube TVが受け持つことで地元への浸透にどう影響が出るのかは未知数です。YouTube TVはMLB World Seriesを放映するなどスポーツコンテンツの充実に熱心ですがそれが地元に露出しなくてはいけない新MLSチームにとって良い選択となるのか、時期尚早なのかも興味深いです。TVの「たまたまチャンネルを変えていたときに見ちゃう」という露出力はネット放送とは質の違う露出機会ですが、LAFCはこれをしない初めての例となります。
スポーツのネット視聴というのは日に日に広がっています。私も遅い時刻の試合はベッドでタブレットで続きは見たりします。LAFCの21世紀型新ビジネススタイルがどう受け入れられるのか期待してます。