プロサッカーにおいて昇降格制度をアメリカでもやろうというサッカーファンは常に一定程度います。ただ言ってるのはサッカー国から来た移民一世二世サッカーファンばかり、というイメージがあります。「他国は皆そうしているから」という理由では中身のない他国追従を軽蔑する気質の強いアメリカ人が納得することはありえない。中身のある理由付けを試みている方もいるんですけど、どうも説得力が不足、ということで昇降格制が現実的な課題となったことは一度もないはずです。

但し、遠い将来の可能性として国内サッカーが大変な人気になって現在のMLSの成功フランチャイズと遜色ない営業基盤を持つチームが40チーム50チームと存在するようになったなら可能性はゼロではない、としておきたいです。つまり向こう30年は絶対にないという意味でもありますが。

アメリカ国内での成功チーム数が増加する可能性として現在二部リーグとされているNASLが「一部リーグが各国単一でないといけないというFIFAの縛りは独禁法違反だ、なぜ一部リーグが複数あってはいけないのか」という訴訟が二部NASLのチームオーナーから昨年起こってます。つまり我々NASL「も」一部リーグと認めろ。一部リーグ指定をMLSに独占させるのは不平等かつ恣意的である、という訴えです。
これは法律的には理にかなった話で、訴訟が成功する可能性はあります。もしこの訴訟が成功してNASLも一部リーグとして認められると、対外的にNASL王者がCONCACAF CLにも登場できるようになる。それを見て海外の投資家がNASLの成長を見込んで参入してくる可能性はある。NASLにはMLSのような矮小なサラリーキャップがないゆえにNASLの方がカネを集めることも選手に払うこともMLSより気前よくできる可能性がある。実際にアメリカでは過去にも下部リーグの全国的に無名の非MLSチームが緊縮サラリーキャップを嵌められたMLSチームよりもサラリーを払っていてアメリカでもっともサラリーが多いチームだった例は何度かあるのです。またサラリーキャップという均衡政策がないからMLSではありえない「ビッグクラブ」が登場する可能性がある。特殊な知名度のあるNew York Cosmosがまさにその筆頭候補でしょう。NASLが狙っているのはそこかと。

MLSが現在23チーム。NASLが現在様々な事情でさびれて6チームですが、もしNASLが一部リーグだと認められればあっという間ににチーム数は倍増するでしょう。3倍増だってあるかもしれない。そうなったら40チームのプロサッカーチームが全米各地に存在することになる。そう。上で私が考えた昇降格制の前提条件が満たされることになるんですね。
それでもなお昇降格制が実施されるかどうかは疑問ですが。NFLの初期のSuper Bowl型、MLBのWorld Series型のリーグ対抗の決戦みたいな形で結合する可能性の方が高いように思われます。2つのリーグが連結するにしてもわざわざ上下関係にしなければいけない理由が見当たらないので。

もうひとつの薄い可能性としては現在33チームが所属する下部リーグUSLがそのままMLSに吸収される場合。USLは米サッカー協会の指定では二部。NASLとUSLと両方とも二部扱いなのです。(これが実際にあるので「なぜ二部は複数あるのに、一部はひとつじゃないといけないんだ?」という点がNASLの前述の訴訟でも主張されています)
USLはMLSと関係良好。NASLとMLSは敵対関係。USLのオーナーたちはMLSのマイナーリーグになることを期待して友好関係を維持している可能性が強いです。野球のMLB−MiLB、ホッケーのNHL−AHLの関係のようなものを想定していると思われ、こちらも昇降格制でMLSの現在の態勢を変えようという意図は見受けられません。
つまりどの方向へ行っても欧州型の昇降格制を現実的に目指していそうな関係者がいないのです。

唯一それを主張してる関係者というとNASLのMiami FCオーナーRiccardo Silvaが、MLSの次期放映権契約で昇降格制の導入を条件に$4 Billionをオファーするとのこと。約4000億円。すごい額です。本当にそんな額をRiccardo Silvaが準備できるのかからして眉唾ですが、とにかくこの方ぐらいですね。MLSはまだTV契約更改期ではないので、という理由でこの$4 Billionオファーを特に検討していないと対外的には言ってます。