OECD経済共同開発機構に加盟する各国、西側先進国と同義語ですが、その中で抜群に識字率が低いのがアメリカという国です。中国はOECDに入ってません。中国は奥地や一人っ子政策逃れの戸籍を持たない人たちなどをちゃんと統計に入れると米国より遥かにひどいかもしれませんが、それは別として、一般に先進国と考えられる国の中ではアメリカは最低です。文盲がたくさんいる。若い人でも少なくない。

先日別の記事で活発にコメントを頂いたのと関連するのですが、このアメリカの特殊事情がアメリカのユーススポーツが学校部活として提供される方が(欧州型の地域スポーツクラブよりも)アメリカ社会に合っている理由の一つでもあります。学校の勉強に最低限のレベルでついていけない子をスポーツスターとしてちやほやしたら文盲ばかりが増えてしまう、社会不適合者を増やしてしまう、という恐れがあるからです。

なぜこれがサッカーと絡んで問題か。アメスポの人気種目(フットボール、バスケットボール、野球、ホッケー。ゴルフ格闘技も入れても良いです)はパワーやサイズを必要とする種目が多いのでプロになる前に身体が大人のサイズになる必要がある。高校生年齢まででも競技技術の習得はもちろん必須でしょうが、いくら将来有望な子でもすぐプロレベルで活躍できる可能性はほとんどないのでその意味では慌てず高校生年齢までは学業もこなしていても問題は少ないのです。だから学業とセットでの部活型の養成過程で遅くない。しかしサッカーはそうでない、とされます。

サッカーだけではないですが、若い頃からの競技能力の開発がほぼ必須となるスポーツはその選手の一般的教養を犠牲にする面がある、という点が問題と言えます。今回は仮にそういう種目を早熟種目と呼ぼうかと思います(何かこれを指す別の言葉が既にあればご教授ください)。
早熟種目には他には例えばフィギュアスケート、テニス、体操、スキースノボ、Xスポーツといったところがそれに当たるかと思います。選手として十代のうちに世界の一流レベルになれる可能性のあるスポーツですね。
それらのスポーツではあまり問題にならずサッカーだと問題になることがあるのか。あります。サッカー以外の早熟種目は個人スポーツがほとんど。プロになれるような英才教育を幼少からするにはコストも相当にかかりますが、それは親の負担になるでしょう。サッカーのように若い選手への先行投資囲い込み→将来の戦力獲得という投資メリットを持つ存在がいないので。
よって他の早熟種目では親に経済力がある子でないと実際問題として才能を開花できないという敷居の高さがある。(但し例えばアメリカテニスはこの問題を20年かけて克服しつつあるようです)そういう投資を親にしてもらえる子たちは多分文盲には縁遠い家庭の出身です。絶対とは言えませんがそういう家庭の子はスポーツで成功しなくても、親の経済力で後付ででも大学に行くこともできるだろうし、社会適合する可能性が高いであろうと想像できます。
他方サッカーが人気の国ではプロのクラブにカネも施設もあるので若い有望選手をことごとくサッカー漬けにしてしまえる。功罪はあるでしょうがそういう早い段階での能力開発が若く才能溢れるサッカー選手を各国で産んできたのは事実でしょう。そしてそうやって集められた選手たちは他の個人早熟種目のように家庭の経済レベルが高いレベルで揃っているとは限らない。親の経済レベルに関わらず元々識字率が100%に近い欧州や日本では問題にならないでしょうが、アメリカだとこれは問題になりうる。

先日の米サッカー協会会長選でも各候補が力説していたのはユースの能力開発のプログラムは今のままではいつまで経ってもサッカー先進国に追いつけないから改革が必要ということでした。異口同音にユース育成方法の強化強化と言ってました。たぶん多くは欧州型のより早い段階からの専門的育成を念頭においていたはずです。協会はサッカーのことだけを考える職なのでそういう主張でも良いと思いますが、大きな目で見るとそれはその子の教育機会を奪う反社会的なユース開発活動になりうる、という可能性も頭に置いておく必要がありそうです。他の早熟種目と違ってサッカーは始めるまでの敷居が低いので油断すると簡単に文盲を大量生産してしまう危険性は他の種目より高いということは意識すべきでしょう。

そこを担保しながらスポーツ英才教育をしている機関の代表的なものにフロリダのIMGアカデミーがあるわけです。実質上高校生年齢の米代表U-16 U-18の年間を通した養成機関ですが、正式に寄宿舎型高校として認可されているので、高校教育も修了できる。サッカー選手として大成すれば良し、またはサッカー選手としては途中離脱となっても大学に進学することもできる形になってます。
ここでの選手開発が始まったのが1997年頃。上でリンクを貼ったテニスのケースとほぼ開始時期は同じです。テニスでは20年かけてやっとトッププロで芽が出た選手を数名作ったばかり。サッカーもほぼ同じ程度の年数をかけてきていることに。既にMLS所属ではそういったプログラムの出身者はかなり多くなってきていますし、代表にも多くの選手が食い込んできている。プロになれなかった子もNCAAカレッジサッカーでは引く手あまたで奨学金を貰って進学できている。つまりそのレベルではこの文武両睨み育成はまずまず成功しているのです。
じゃあ欧州のトップクラブで求められるような人材を開発できているかというと、こちらは残念ながら皆無です。その上米代表も弱い、と昨年のW杯予選敗退で露呈してしまった。だからこそユース育成制度の見直しアップグレードが叫ばれているということになるんですね。

ではどうするか。さらに低年齢までサッカー英才教育プログラムの充実を図れるのか。資金の面ではサッカー協会やMLSの体力は20年前と比較して格段に上がっていますから拡充は可能でしょう。それがモノになるのは、また20年後でしょうか。その過程で十分な基礎教育を受けられなかった落ちこぼれがどれほど出るか。でもやらなきゃ前に進めないですしね。