さてNFLシーズンも終わりましたので腰を落ち着けてXFLの話題といきましょう。
まず蘇る新XFL構想の概要について。XFLはVince McMahon率いるアルファエンタテインメント社が企画する新フットボールリーグで、2020年1月または2月から8チーム10週間のリーグ戦開始を予定しています。最初に噂が出てきたのは2017年末、その後2018年1月になってアルファ社が正式に新生XFLの始動を発表。具体的なチームの所在地などは未定。ただしNFLの所在する都市にXFLフランチャイズを配置すると明言しておりニッチ戦略ではなく正面突破を狙うようです。すべての所属チームはXFLという単一の会社の部門という形で、個別のチームオーナーは存在しない、サッカーMLS型の経営で行くとのこと。McMahonの独裁でもあります。
2001年に存在した旧XFLではBirmingham(南部アラバマ州), New York, Orlando, Chicago, Memphis, Las Vegas, Los Angeles, San Franciscoの8都市展開。8チームのうち5都市が非NFL都市でした。当時はLos AngelesにNFLチームなし。また2020年までにはNFL Oakland RaidersはLas Vegasに移転を完了している予定です。
とりあえずの発表ではNFLのある都市へ行くと言ってますしそれには後述の深い理由があると思うんですが、例えばSan Diego、NFL ChargersがLos Angelesに移転してNFL級のスタジアム施設が空き家になっているSan Diegoは見逃すには惜しいマーケットのようにも思えます。そういうわけで非NFL都市にもXFLの新チームができる可能性はあると考えた方がよさそうです。逆にNFL側から見るとChargersのLos Angeles移転は早くも失敗ではないかという意見もあり、XFLを迎え撃つためにChargersのSan Diego帰還を企画するという可能性があるかもしれません。まだ今の段階ではそこまでは読みようがありませんが可能性として。

McMahonが言うには新XFLでは政治問題を持ち込ませない、犯罪者はプレーさせないそうです。前者はNFLで大きな問題になった国歌起立問題をはっきりと排除する意向ということなのでしょう。同問題でNFLファンから離脱したトランプ支持者のフットボールファンの取り込みを意識しているんでしょうね。後者は若干微妙で、旧XFLのときはいろいろお行儀の悪いことをOKとしてアウトロー的なイメージで売ったのが、今回は優等生路線であるかのようにも聞こえます。イメージチェンジか。では旧XFL当時のお行儀の悪いルールなどは存続するのかどうか。それに何を基準に「犯罪者」とするかによりますがJohnny Football Manziel選手が参加できなくなってしまうのでは?前者の理由ではCollin KaepernickはXFLに入れないし、後者の理由でManzielも入れないとして、発足時にちゃんと目玉選手は確保できるんでしょうか。QBだけで考えても他に在野ではRobert Griffin IIIやTim Tebowはいますが、8チーム分ちゃんと手当できますかどうか。犯罪者云々は単なるNFLに対するイヤミで実際に選手を確保する段になったらなし崩しということもありそうですが。

さて表題の件です。なぜXFLの初年度となる2020年ではなく、二年目の2021年シーズンが勝負なのか。
それはNFLで2021年シーズンに労働争議が発生してシーズンが消滅する可能性があるからです。労使協定の更新時期で、NFL選手会は既に選手たちに2021年はシーズンが消滅して収入がなくなる可能性があるからいまからお金の算段はつけて無駄遣いに気をつけてと呼びかけています。前回の労使協定交渉があった2011年はオーナー側が先手を打って同年3月の時点でロックアウトを開始。終始オーナー側のペースで事態が動いてほぼ4ヶ月後キャンプ入り前に妥結しています。オーナー側の譲歩は想定内に収まりました。当時を振り返って気合を入れ直している選手会は2021年の協定改定では大きな勝利を勝ち取ろうと準備を進めています。
ご存知の通りNFLはアメスポナンバーワンの人気ジャンルでありながら選手契約では他のメジャースポーツと比較してとても不利な契約慣行がまかり通っています。誰それが「5年契約」と発表されても実際は3年分しか収入の保証がなく、同じ内容でもMLBだったら「3年契約2年間の球団側オプション」に等しい内容だったりするのです。NFLで選手側がオプションを持っているような契約は記憶がありません。選手寿命も短いNFLでもありリーグの人気に比べて収入面での不安不満が強いのです。2011年の労使交渉敗戦を2021年では決してその愚は繰り返さないぞというのがNFL選手会の強い意思とされます。

でこのNFL次期労使協定の話とXFLのどこが関係があるか。ストやロックアウト進行中はNFLの全選手=労働者は他の仕事をして糊口をしのぐことが法律的に許されます。つまりXFLでプレーすることが可能になるんです。ここです。2011年の労使交渉ではオーナー側が先手を打って3月にロックアウトを仕掛けてきたと上でも説明しました。3月。そう。2021年3月はXFLは2年目のシーズン中なんですよ。つまり2011年と同じことを同じタイミングでオーナー側がしたらNFLの全選手がXFLに出場可能になってしまうはずです。選手寿命の短いNFLで1シーズンを棒に振るのは選手たちにとっては大きな損害ですからXFLに参加する選手がかなり出ても不思議ではない。
そうなったときに効いてくるのがXFLのチームが大都市・NFL所在都市にチームを持っていることです。NFL所在都市のスポーツファンの方がNFLの有名選手が流れてきたときに敏感に反応してくれるでしょう。また施設もNFL基準で見て立派なスタジアムでやっていないとスター選手が来てくれる気にならないでしょう。旧XFLのときのBirminghamとかじゃダメです。だから大都市でやると言ってるのだと思います。もしシーズン中にNFL選手が参加してきたらどこのXFLチームの選手になるのか?それはMcMahonの思惑一つです。最初に述べた通りXFLはリーグ全体が単一の会社組織という構成なので各チームに平等に選手を獲る機会を与える必要がない。McMahonが勝手にその場で決めていいのです。もし(例えば)Aaron RodgersがやってきたらGreen Bayから近場のChicagoに配置するかもしれません。それともプレーオフに出られそうなチームに入れて露出の機会をわざと増やすなんてこともありうるでしょう。昔NFLでホットラインを形成していたQB−WRが今はNFLでは違うチーム所属なのをXFLで復活させるなんていう人材配置にしたって良い。その手のマッチメイクはWWEで鍛えられていますからVinceの得意とするところでしょう。その得意なことを自由にやれる態勢がこの一社でリーグ全体を保有という形態ってわけです。

さあそんなふうにうまく行くか?そう簡単ではないでしょう。私が気づくぐらいですからNFLの中でも当然気づく人がいますからそれを想定して労使交渉のシナリオをいまから練れます。NFL選手会の方だってXFLという別の職場選択肢があるのは対NFLの交渉で強気に出られるので存在はありがたいが、本音はNFLが選手会の要求を飲んでくれて好条件でのNFL残留でしょう。本気で2年目のXFLに行きたいわけがない。初年度よりは良いにしても2年目のXFLが8チームや10チームで32チームあるNFLに所属する選手会の大半を雇えるわけもないのですし。