アメスポで2月といえばSuper Bowlですが、その先、私は米サッカー協会の会長選挙に大いに興味を持っています。投票日は2月10日。8名が立候補。最有力なのはSoccer United Marketing社社長だったKathy Carter氏とされます。もし選ばれれば史上初の女性の米サッカー協会会長になります。複雑な投票システムのせいで事前の票読みはまったくできず有力と言っても本当にそうなるのかは蓋を開けてみるまでわかりませんが。

Carterが有力とされる理由はまずMLSコミッショナーDon Garberと前会長のSunil Gulatiが後援しているから。そして女性だから。
8人の立候補者のうち女性はCarterとあとは元代表GKだったHope Solo。Soloは8人のうちでは一般の知名度は最も高いですが、その知名度が上がった理由の中にはネガティブな事件も多い。問題発言も多かったしドメスティック・バイオレンス事件やらプライベート画像流出事件などもありました。同僚の間でも人望があるタイプではないとされますので支持が集まりそうにない。だからCarterの方が有力、という話と理解しています。
女性だから支持が増える、というのは代表選手の男女間の報酬格差が大きな懸案のひとつであるからでもあります。これがあるため女性有権者が女性候補に投票する可能性が高いのです。投票する協会員や選手たちの半数は女性だと思っていい。6人にばらける男子候補よりも、2人しかいない女性候補有利というのもCarterが有利とされる理由です。
この男女間の報酬格差是正問題が重要課題なのは男性候補も意識していて、男性候補の中で最有力とされるEric Wynaldaはこの問題に積極的に発言して支持のとりつけに動いていました。でもこれは諸刃の剣で、男子側の投票者からは不満を持たれる可能性もあります。Carterはうまいこと言っていて「I like Equal Pay」とまず一般論を述べて女性有権者にアピールしてます。現実的にはW杯からの分配金や各種放映権料収入などが男女では圧倒的に違うので男女同額の報酬などは論外なのでしょうが、とりあえず一般論で支持を得ようとする言い回しのうまさは認めざるをえない感じです。

8候補のうち3名が代表選手だったひとたち。女子のHope Soloの他に男子で2000年まで代表FWだったEric Wynaldaと、短い期間代表に名を連ねたことのあるKyle Martinoの三人です。Soloについては上記の通り。Wynaldaが元気だったころっていうのはアメリカ国内でのサッカーの地位と露出力が極低かった時代です。1994年アメリカW杯代表メンバーだったのがWynaldaの一番露出の高かった時代だと思いますが、でも同大会で一番一般メディアで露出の高かった選手は髭のD Alexi Lalasだった。当時のWynaldaを覚えている人はよほど古くからサッカーの好きな方だけのはずです。W杯には三大会出場するもゴールは94年のグループステージでのFK一発のみ。初期のMLSでは渡り鳥になってしまい記憶が薄い。特定のチームにファンが残っているということも見込めない。つまり現役時の存在感が得票につながる可能性がほとんどないのです。
もう一人のMartinoはMLSで7年のみプレー。代表キャップ8。若いうちにあっさり現役を引退してしまっていて現在36歳。中上流の家庭出身で安いサラリーのMLSで奮戦するよりも実入りの良い仕事が他にあったとされます。引退後女優さんと結婚したりという辺りでもそれを想像させますね。
こうやって見ると元選手の候補にカリスマ性がゼロであることがおわかりになると思います。手腕があろうとなかろうとこの人ならとサッカー関係者に慕われる人気者的な人がいない。サッカーが日陰のマイナースポーツであった時代から遠くないから仕方ないのですが、あまりにも人材がいないので選手出身の会長は難しいのではと思われます。たらればで言えば長年女子代表の大エースだったAbby Wambachがいたら強力な候補になったかもなと思わされますが、Abbyは数年前にコカイン所持を告白、政治的には完全に無力化されています。(その理由で一昨年の米大統領選挙戦でClinton支持に馳せ参じられなかったということもありました)

ということでCarterが初の女性サッカー協会長になる可能性が高いとして、懸念材料はあります。本当のところこの人は米代表の強化が託せるのか実効ある政策があるのか、という点と、この人はあまりにもMLSに近すぎるのではないか、という点のふたつ。後者の問題についてはCarterが社長を務めるSUMというのはMLSの子会社でありCarterはMLSコミッショナーGarberの長年の部下で、MLSを最優先させる政策を掲げるばかりになるのではという危惧です。具体的にはまた別途検討してみたいです。

代表の強化の問題は男子代表がロシアW杯出場に失敗したショックから今回の乱立選挙戦という事態になっているので多くの協会員にとって重大関心事なんではあるのでしょう。私個人的には極論すれば実はどうでも良いような気もします。もちろんなにかやらないと伸びないでしょうからやるべきなんでしょうが、どの候補も実効のありそうな提案はしていない。全国で統一的に選手育成をしようだの言いますが財源のことは誰も言いません。サッカー後進国のアメリカを世界レベルで勝たせるような強化というのは本当を言えばだれがやっても絵空事だと思うのです(なぜ絵空事なのかの理由や中身は別項にします。下書きしていたらものすごく長くなってしまったので)。サッカーが国民の最大の関心事であるような国がごまんとある中でそうではないアメリカがそうそう勝てるものではない。今回の新会長がどういう策を施してもその効果の現れる頃にはW杯は48カ国出場の大会になることが決まってます。どうせ出場できるに決まってるのです。FIFAもアメリカのいないW杯を望んでいない。
また2026年大会はカナダ・メキシコと組んで北米三国での開催を狙ってもいるし、様々言われる強化よりもW杯をアメリカに再び呼んで関心を高める方が手っ取り早い裾野の拡大になるのは確実かと思われます。各候補の強化策についてのコメントも具体性がないものばかりでこんなんじゃ誰がなっても同じと思えます。2026年開催を間違いなく引っ張ってこられる人であればそれで強化にはなるのでしょう。