スプリングトレーニングまであと二週間となってもMLBのFA市場が動きません。たまにMLBの大物選手の移動のニュースが入ってくるとことごとくトレードで、FAの選手の動きは異様に鈍い。
いろんな面があります。まずはスコット・ボラスを代理人とするFAが多く、序盤戦からボラスの遅延戦術が効いていたこと。それに対して過去ボラス戦術に翻弄され高い買い物をさせられたMLB各チームが今オフは腰を落ち着けて選手側がしびれを切らすのを待っているかのような動きになっていること。越年ぐらいは屁でもなかったでしょうが1月も終わろうとしているのにチーム側からの積極的なアプローチのなさにしびれを切らしてボラスが最近「MLBは結託してFA市場を安値に誘導しようとしている」などと公言し始めました。安くなるまで待つのはまったくもって買い手側の自由で合法ですが、結託というところは違法になりうる、というところがこの発言のミソです。もちろんこんな発言をイライラして公言するということはその違法性を証明することはほぼ不可能であるのも知っての上での牽制でしょう。オーナー側からすれば「しめしめさすがに焦り出したな」ってなところでしょう。たぶん顧客である選手たちからも不安の声がそろそろボラスのところにも届いているのでそのガス抜きという面もあってのボラスの発言なんでしょうね。
選手+代理人 対 MLBオーナーの銭闘はそのうち落ち着くところに落ち着くのでしょうが、この煽りを受けるのはFAの選手たち。長いMLBのレギュラーシーズン。選手たちは4月の開幕にベストコンディションまで上げてくるとは限らないのがMLBなのでスプリングトレーニングに少々遅れて入るのは普通のシーズンなら大した問題ではない。春先に出遅れた主力選手が出るのは仕方ない、と腹をくくってしまえばチーム側はさほど焦る必要もないのです。
例えば今週Lorenzo CainとChristian Yelichを獲得したMilwaukee BrewersがYu Darvishとの契約にこぎつけたら一気に他のFAも動き出すのかもしれない。Cain, Yelichを加えた打線にDarvishを加えれば昨年の成績に上積みできるはず。昨年はプレーオフに僅かに届かなかったBrewers、この補強で十分に戦えると計算できそうです。
しかしCain, DarvishがFAから契約にこぎつけてもそれでも市場が動かない可能性も残ります。CainもDarvishもボラスの顧客ではないからです。ボラス対オーナーの我慢比べという理由で今オフのFA市場が凍りついているのであればMilwaukeeはその間隙を突いて補強を完了、しかし他のチームはまだ動かないという可能性が残ることになります。

もう10年以上前でしょうか、Roger Clemensのキャリア晩年に春先の契約をせずにあえてシーズン開始後までFAのままで過ごし、勝てそうなチームを選んで途中加入するということをやったことがありました。あれはClemensという実績と名のある投手だからできたことですが、同時にあのオフの交渉でClemens側が思ったほどには好条件が出てこなかったからでもありました。我慢比べに負けるのが嫌なボラスが手駒のうちの何人かにこの方法を勧める可能性があるのかもしれません。

個人的にはEric Hosmerが好きなので彼をどこが獲るのかはちょっと気になってます。