既に読者のみなさんご賢察のことかと思いますが、前項の話はラグビーリーグをお奨めしているわけではないわけです。ぶつ切りの試合の流れが良くない、というよくある批判はたぶん事実ではないのではないか、ということを実例を挙げて言いたかったわけです。つまりは例えばアメリカンフットボールを知らない人に紹介するにあたっては「何をやっているのがわからない」というのがほぼ唯一の問題であって、何をやってるかわからない中、試合の小休止が特に目につくという話でぶつ切り云々は実はどうでもいいはずと言いたいわけです。そうでないとラグビーリーグがラグビーユニオン以下の人気しかつなぎ止められていない理由がありません。


何をやってるのかわからないと言われがちな競技としてはアメリカンフットボール、クリケット、野球、サッカー、ラグビー、オーストラリアンフットボールなど。観戦を楽しむのに馴れが必要な競技は多いです。対してバスケ、バレ−、テニス、陸上、水泳、相撲はプロセスと結果が短時間で直結しているので比較的そういう批判は少ないはず。但し実際には前者のグループの方がプロとして興業的に成功している場合が遙かに多いのはなぜか?という点に注目したいです。

仮説として「人々は単純なものでは飽きてしまう。ある程度の複雑さを求めている」という回答がありうるかと思うんですがどうでしょうか。


私が育った頃の日本では野球が理解が難しいスポーツだという認識はなかったように思います。それは高校・プロの放送がいつでもあって自然に野球というスポーツの流れを知っていたからなんじゃないかと思います。つまりそのレベルの浴びるように見る環境があれば多少ルールや戦術が複雑でもそのうちわかるさ、ということです。アメリカにおけるフットボールがまさにそれでしょうし、サッカー国におけるサッカーでも同じでしょう。それぞれは特に見やすいスポーツでなくても浴びるように見ている国の人にはそのフロー、いくつものパターンが自然に頭の中にストックされていく。それが文化というものです。

NFLの英国進出の問題はその文化をいまの21世紀の環境で人為的に作れるのか?ということでもあるんでしょう。TVだけに限っても各国で多チャンネル化が著しい(日本は極端に少ないままですが)。TV以外のエンタメもいくらでもある。そんな環境でなにかを浴びるように人々に見て貰えるほど提供するということは可能なのかな?ということですね。先日ご紹介した調査結果からすれば、内容への理解はともかく存在の認知は進んでいるようですが。


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あとアメリカンフットボールを知らない人に紹介する場合の話として、ルールが複雑だ、という話が出てきがちですがこれも私は違うんじゃないかなあと思っています。説明の切り口がその魅力の紹介とズレているのではとも思います。
これはアイスホッケーの例ですが、アイスホッケーを知らない人に競技を説明するビデオ(確かNHL本体の提供のHocky 101というビデオクリップだったと思います)で、最初にon the flyの話をするのに閉口したことがありました。on the flyというのは試合進行中に試合を止めずに選手が交代できることを指します。確かにそれは多くのスポーツとアイスホッケーが大きく違う点です。が。それを最初に持ってくるのは違うだろと思うわけです。ホッケーの魅力となんの関係もないじゃん、と。紹介すべきは豪快なスラップショットが最高!でもそれだけじゃレベルの高いホッケーでは相手も身体を張ってきてそうそう得点できないので、こうこうこうやってコンマ数秒でパスを回して決めるんですよーっていう実例の方でしょう。

同じ事でフットボールだと必ずダウン制の話を最初にしてしまうんですが、それは違うと思うのです。プレゼンとして間違っていると。相手を思いっきり吹っ飛ばして良いからとにかく前に進む。こういうサイズのスーパーアスリートがフルスピードでぶつかり合う!爽快!(それに際して細かいルールはあるけどそれは追々わかれば良いから気にしない!)。でもそうは簡単にいかないので前パス横パスやパスのフェイクを駆使して駆け引きするんですねーとプレーの例示すべきだと思うんですけど。