これは新しい展開です。サッカーMLSの創設メンバーであるColumbus Crewがテキサス州の州都Austinに移転を検討、現在の地元であるColumbusと、Austinの両都市に新設サッカー専用スタジアムの建設を要求しているというニュースが入ってきました。これはけっこうおもしろい問題だと思います。

Columbusは中西部オハイオ州の州都。カレッジスポーツの強豪Ohio State Buckeyesが圧倒的な人気を誇るホームタウンであることから元々メジャープロスポーツに避けられてきた土地柄でもあります。マイナーリーグベースボールチームは長年存在(Columbus Clippers、元New York YankeesのマイナーAAA=伊良部なんかがマイナー調整で出ていたことあり、現在はCleveland Indians系列)しましたが、他のプロスポーツが入ってきたのはMLS Columbus Crewが1994年、NHLのColumbus Blue Jacketsが参入したのが2000年。プロスポーツの歴史の浅い都市です。

Columbus CrewはMLSの創設メンバーであると同時に、MLSで最初にサッカー専用スタジアムを建設して成功、その後のMLSの発展の道を拓いた重要なフランチャイズでした。Columbus Crew Stadium=現Mapfre Stadiumは1999年開場。その頃までMLSは自前のホームスタジアムを持つチームはなく、どこもNFLやカレッジフットボールの大会場を間借りしたり、高校のフットボールスタジアムで試合をしていました。高校のフットボールスタジアムの場合はしょぼく、カレッジやNFLの大会場ではガラガラ。それはそうです。Columbus Crewの場合、Ohio Stateの10万人収容のOhio Stadiumに1万人とか。当時の基準で言えばサッカーの試合に1万人も入れば成功なのです。成功なのに、でもあまりにも箱が大き過ぎてガラガラで寂しくてどうしようもない。暗くなる。MLS自体も毎年赤字。観客も伸びない。オーナーからも離脱組が出始める。

その苦しい時期にLamar Hunt(AFL/NFLのKansas City Chiefsのオーナーでもあった大立者)の所有だったColumbus Crewが思い切ってサッカー専用スタジアムを建設すると言い出したのです。収容2万5000人ほどのスタジアムをあっという間に建ててしまいました。そしてこれが当たった。サッカー専用スタジアムのピッチからの近さは素晴らしいもので、それまでとはまったく違う臨場感でファンを動員するのに成功。Crew Stadium開場後のMLSではCrewだけが収支トントン、あとは全チーム赤字だと言われていたほどの優良フランチャイズ化。その後、他のMLSチームがColumbusでの成功事例を叩き台にして地元自治体に働きかけて都市開発のテコにサッカー専用スタジアムの活用を促し、現在では大半のチームが専用スタジアムを確保するようになりました。新規参入組はホスト都市がサッカー専用スタジアムを建設するのが誘致の条件とすらなっています。

その初期のMLSの優等生だったColumbus Crewが今回Columbusから去ることを検討しているというんですから時代が進んだなあと感心してしまいます。新しいスタジアムを税金で建てろ、嫌なら出て行く、なんて他のメジャープロスポーツみたいなことを言ってるなあ。MLSもこんな偉そうなことを言えるような立場になったのかと。(まだ成功するかどうかわからないですが)

同スタジアムは1999年開場ですから18年目。この時期にこんな話題が出てくるんですから元のリース契約が20年契約だったのかもしれません。確かにMapfre Stadiumは後発のスタジアムと比較すると鉄骨剥き出しの部分が多く、美麗さよりも機能重視で建てたのは明らか。

またColumbus Crewも含めて創設期から存在するチームに観客動員で苦戦しているチームが多いのもMLSの課題です。Seattle Soundersが加入して突発的に3万人4万人超動員を連発してあっという間にMLSの動員トップになりました。Seattleの場合はあまりにも動員が凄すぎて他のMLSチーム並の中規模2~3万人収容程度の自前スタジアムを建設する理由がなくなり、NFL Seahawksのスタジアムに常駐同居になってます(=ポジティブな理由で数少ない自前スタジアムを持たないMLSチームに)。Seattleほどではなくても後発のMLSチームが動員で健闘する中、初期からあるフランチャイズの大半がリーグで動員下位に低迷している、という問題を抱えています。これは過去にも当ブログで指摘済み。Columbusの場合は、途中で一度スタジアムを改装して収容数を二割以上減らしたんですがいまもって滅多に完売できない状態が続いていました。(このスタジアム改装はゴール裏席をなくすなど改悪だったと思いますが詳細は今回省略)

今回Columbus Crewが移転を言い出したのは、MLSがいよいよ不振の古参フランチャイズのテコ入れに入ったということなのでしょう。MLSの中で下位とは言え平均17,000人を動員するのがダメ判定できるほどMLSがビジネスに自信を持ってきたのはすごいことではあります。リーグ創設当時なら17,000人平均入ったら狂喜したでしょうに。

移転先候補がなぜAustinなのかは謎です。テキサスの州都Austinはカレッジフットボールの人気校Texas Longhornsの地元でもあります。Columbusと似た立地と言えるかも。テキサスは高校フットボールでも(Mapfre Stadiumより立派な)すごいスタジアムがいくつも建っている土地柄ですからスタジアムを建てるぐらい簡単に建ててくれるでしょうが、Austinなんかでサッカーが人気になるのかな?という疑問はあります。MLSはテキサス州内にFC DallasとHouston Dynamoの2チームを展開してますがどちらも動員では下位です。