またまったく別の大変な話が沸いてきました。カレッジバスケットボールの高校生をリクルートする過程で大学・企業・代理人が一体となって金銭を高校生およびその親族を渡す行為が恒常的に行われており、それをFBIが内偵していた結果、これまで判明しただけでも10名ほどの大学コーチが違法行為をおこなっいたと。その中にLouisvilleの名コーチRick Pitinoおよびその上司であるADも含まれているとされ、両名は即刻大学から謹慎処分を受けた、というものです。企業としてはとりあえずアディダスが大きく関わったと名前がでていますが、実際にはアディダス以外のアパレル大手企業もこの問題に関わっており今後さらなる延焼が予想されます。

延焼具合がどうなるか見通せないのでまたこの件は追ってフォローしてみたいですが、Pitinoに関しては「またか」という感じが否めません。過去女性問題、恐喝問題なども過去にあり、いままでよく生き残ってきたんですが、お歳もお歳。それに今回の問題は過去のスキャンダルとレベルが違う。女性問題は民事ですし、過去のリクルート違反などはNCAAの調査であった。出場停止なり勝利剥奪だのポストシーズン出場制限・リクルート制限を受けるだのだったのに対して今回はFBIの捜査ということで刑事事件です。連邦刑務所に服役しなくてはいけない可能性がある大変な問題でLouisvilleのHC職を辞めれば全部済むというような甘い話ではない。

またADのTom Jurichという人は大変なやり手で、就任以来Louisvilleの運動施設を次々と改修。特に目立ったのが以前はまったく歴史のない野球で突然Louisvilleが強くなったのが目立ちました。基本的に大学野球は温暖な地方の学校が強い。ケンタッキー州Louisvilleでは大学野球のシーズン(2月から6月)では寒すぎるのです。ところがなぜかJurich就任後急に強くなってCollege World Series出場常連となり、ACCに移籍してからは歴史のあるFlorida State、Miami-FLを差し置いてACC最強の地位に。なぜ強くなったのか、なぜそんなに施設更新のカネが沸いてきているのか疑問がありましたが、ひょっとすると今回明らかになった問題に絡んでカネが流れてきていた結果だったのかもしれません。この人もPitinoに連座して即刻謹慎処分。Pitinoの代理人によれば謹慎とは言うものの実際は解雇処分と考えて良いとのこと。

リクルート生にカネが渡っているという疑惑は古くからあり、そこに遂にメスが入ったということのようです。これ、たぶん近年話題になっていた「大学のアスリートにプレー報酬を与えるべきか否か」という話題とセットなんでしょうね。FBIの内偵は少なくとも数年前から行われていたと考えるべきで時期としてはあの議論が熱かった時期と重なるはず。裏でカネを貰っているのに「タダでプレーさせられている。俺達は搾取されている」と主張していた学生アスリートたちがかなりいたということなんでしょう。

ところでなぜこの問題がバスケットボールでなのかというとこれは大学への在籍年数要件の理由でしょう。つまりベースボールやフットボールでは高校卒業後3年はドラフトにかからない。つまり高校リクルートから数えて4~5年先の話で、ビジネスとして迂遠。それに対して大学バスケは1年ですぐにNBAドラフトにかかれる仕組みなので2年という短いスパンで投資が回収できる仕組みだからでしょう。