良くも悪くもアメリカというのはあまり他国のことを気にしない国です。他所がどうやっていようとそれに合わせるかどうかは自分達のニーズ次第。アメリカがカレッジをスポーツの養成機関としているのは、クラブ方式の欧州とは大きく違うわけです。なぜそうなのかというと元々欧州よりも格段に識字率の低いアメリカ。そんなところでクラブ方式のスポーツ人材育成をしたらスポーツ以外能のない社会不適格者の大量生産になってしまう。多くのアメリカのプロスポーツが事実上カレッジを通過することを強要することで、少なくとも文盲みたいな選手を許すことはなくなっている(はず)。NBAが高卒選手をカレッジを経ず直接プロに行けるように再び制度変更を狙っていますが、それでも高校卒業は必須とするようですからある程度の教育義務は担保している。

ただ比較的若年でも世界のトップに近いところまで行ける早熟型のスポーツ ジャンルではこの制度ではうまくいかない。代表的なところではサッカーやテニスがそれに当たるでしょう。  

日曜日に終了した全米オープンテニスでいくつかアメリカのスポーツ育成が絡んだ話題がありました。女子シングルスでメジャー初優勝したSloane Stephensですが、TV放送で解説の方が言うには彼女はいわゆる裕福な家庭の出身ではなく、アメリカテニス協会が運営に出資していた地元のクラブに子供の頃に入ったことがきっかけでテニスを始められた子なのだと言います。テニス人口が細ってきたことへの危機感と対策として協会が20年以上前から取り組んできた草の根の掘り起こしの成功例なのだと。

男子の方で一回戦敗退だったFrances Tiafoeも似たケースなのだそうです。日本から見るとTiafoeは無名でしょうが、今回の全米オープンでは主催者指名ワイルドカードで一回戦でRoger FedererとプライムタイムのTV試合で対戦(例のSharapovaの試合の翌晩)してフルセットの熱戦をしてアメリカの一般のスポーツファンにお披露目をされた選手です。Tiafoeは直前大会のWestern & Southernで第4シードだったAlexander Zverevに大アップセット勝ちして初めて世界のトップ10選手に勝利したばかりの伸び盛り19歳。私はたまたまこの前大会の試合を見ていて大変盛り上がれました。それゆえFedererとの試合も試合前から期待していて、その期待を上回る大熱戦でFedererを苦しめた、久々の期待のアメリカ人男子選手です。

ゴルフやフィギュアスケートもそうですが、テニスも一般に親の強い後押しとコスト負担で過去成立してきたジャンル。強化するには若い頃から個人的に相当の経済的負担が必要なスポーツで中流以下の家庭からは選手が見いだせないというのが常識でした。その常識をひっくり返して遂に全米オープンチャンピオンを産み出した。米テニス協会や関係者の喜びは一般に想像される以上に大きいのだと思います。  

メジャースポーツと人材の取り合いで互さねばならない中でテニス協会は結果を出しつつあるということですね。ちなみにテニス協会が大会中に流していたCMによればそれらのクラブはテニスを教えるだけでなく、学校の宿題をこなすのを手伝うチューターもクラブ内に配置して学業で落ちこぼれてしまう選手を出さない配慮もしていたようです。