NBAが来年2月開催予定だったノースカロライナ州Charlotteでのオールスター戦のキャンセルを発表しています。先日も少し触れた同州の法律がLGBTに対する差別であり、それへの反対の意思表明としてのキャンセルということです。近い将来の同法の撤廃を見込んででしょうが早ければ2019年にもCharlotteは再びオールスター戦の開催権を得る可能性があるとも発表しています。同州側の対応がどうなるのか。これから11月の大統領選挙まではアメリカは4年に一度の政治の季節。そこまではノースカロライナ州議会も抵抗して同法を維持しようとするのか、などスポーツ以外の部分で興味深いバトルが予想されます。南部に属するノースカロライナ州はほぼ保守・共和党の地盤で選挙結果も見えている土地柄なので同州での投票行為についてNBAがなんらかの影響を与えようという意図を持っているというよりは、他のよりリベラルなSwing Statesへのアピールが強いと思われます。Swing Statesというのは大統領選挙で毎回のように二大政党のどちらの候補者を選ぶのかが揺れ動く州のことで、大統領選挙では激戦、キーポイントとなる戦場州です。
Golden State Warriorsの社長であるRick Weltsはゲイであることを公言しているのですが、彼が強く今回のNBAの方針に関与したとされます。NBA全体としての利益になる行動かどうかはいまひとつ私にはピンときていないのですが、他のメジャースポーツよりもこの問題に積極的なのが将来的に吉と出る可能性は確かにあると思います。
Golden StateといえばNBAコミッショナーのAdam Silverが暗にGolden StateとCleveland Cavaliersを指して「戦力が一部チームに集中するのは好ましくない」旨の発言をしたのが数週間前。コミッショナーというのはオーナー達から好かれていないとやっていけない部分もあるので他の28チームのオーナーからそういう発言を促された面もあったのでしょうが、NBAを大いに盛り上げてくれたWarriorsとCavaliersを否定、それもそれを公言するのか、という意味でAdam Sliver、ちょっとオーナーの顔色をうかがい過ぎじゃないかとも思いました。一般ファンはCavaliers x Warriorsの二年連続のファイナルを楽しんだのは視聴率の結果からも明らかだったのに。たぶんファンは三年連続同一カードでも嫌がらないんじゃないですかね。もしオールスター戦のキャンセルもまたファンのためではなく、一部のNBAエクゼクティブの要求に沿って行われたとしたら、個人的にはSilverコミッショナー、ちょっと風見鶏ぽくないか?と疑問を感じるところです。
NBAがらみでもう一ついまコミッショナーが対応に苦慮している問題があります。女子WNBAで一部のチームの選手が人種問題に関連した政治的アピールをコート上で行っています。黒人市民を白人警官が射殺した事件に端を発する「Black Lives Matter」というアピールを巡る対応で、NBAは当該選手たちに罰金を課したのですが、彼女たちはその後もNBAの指導に従っていない。WNBA自体がマイナーな存在でこの問題は大きくスポーツメディアで取り上げられているわけでもないのがさらにそれらの選手たちにはおもしろくないようなのです。Black Lives Matter(黒人の命だって大事だ)というアピールが人種間の軋轢を増幅させる面がある、よってよろしくないというのが政治的に正しい言い方となります。Black Lives MatterへのアンサーとしてAll Lives Matterというスローガンも登場して人種間の緊張を弛めようという努力もアメリカ社会では行われているところ。
興味深いのは最初の方で述べたマイノリティLGBTの権利については相当に強硬にNBAは抗議行動を取っているのに、同じくマイノリティである黒人の権利については主張すると罰金制裁というわかりにくい基準をとっているところでしょう。アメリカ人はダブルスタンダードを嫌悪するところがあるんですが、今回はダブルスタンダードっぽいけど大丈夫か?という気もします。先に述べたようにWNBAでの抗議活動はマスメディア的には黙殺に近いところもあっていろいろ微妙です。
それにしてもほんの数週間前には大変な人種間闘争に盛り上がる可能性もあったBlack Lives Matter運動、一気にメディアでは消沈してしまいました。その理由のひとつは…やはりPokemon Goじゃないでしょうか。いや冗談ではなく。人種問わず皆が喜々としてポケモンゲットでうろうろする方が平和でシアワセでしょう。すごいと思います。
日本からは温度感がわからにくいところではありますが、今回の"Black Lives Matter"は、類似事件の折からの積み重ねもあり、抗議活動が暴力的な方向に発展しかねないほどセンシティブな事案である、と判断されたのではないでしょうか。(良い、悪いではなく、とにかく刺激するな、と)
一方LGBTがらみの話には、暴力的な雰囲気が感じられません。
NBAへのメリットを鑑み、暴力的な方向に発展しそうにない、"お行儀のよい範囲に収まる"抗議活動は、NBAのクリーンなイメージな広めるのにつながるので許容し(それは、おそらくファン獲得につながる)、暴力的な方向に発展しそうな抗議活動(およびそれへの関与)は、ダーティーなイメージをつけるので許容しない(それは、おそらくファン離れにつながる)、という方針をとっているように見えます。
抗議活動が暴力的な方向に進むかの判断や、そもそもどのようなイメージを持つか自体が個人の主観によりますから、一貫性があり、異なる価値観の人たちにも公平に思える判断"ルール"にはならないでしょうね。見方によっては、ブログ主さんが書かれているようにダブルスタンダードにしかみえないでしょう。
すみません、全部推測です。