せっかくハンドボールの話をコメント欄で展開したのを研究成果として一本のまとめた記事にして残しておこうと思います。話題を振っていただきありがとうございました。後発マイナースポーツのアメスポシーンでの振興とはいかなるものになるのかという視点でも意味のあるやりとりになったのではないかと思います。


まず発端は日本でハンドボールを楽しまれている方からアメリカでのハンドボールの普及状況や展望についてお問い合わせをいただきました。ハンドボールは五輪競技であり、日本では古くから日本リーグ実業団があって、大人気ではないにしても馴染みはそこそこあるスポーツかと思います。対してアメリカでは五輪実施競技の中で最も馴染みの薄い競技の一つであると思います。私はアメリカにきて長いですが実際にプレーをしているのはただの一度も見たことがない。多チャンネル化が進んだ近年の五輪放送で稀に見かける程度です。たぶん大多数の人がハンドボールという競技を見たことがないはず。五輪のときが唯一の露出の機会だとして、米代表は1996年アトランタ五輪以来五輪に出場できていないのでそちらも苦しい。
米代表チームの記録を少し調べてみると昨年2014年に行われたPan American Men's Handball Championshipで参加8カ国中の6位。5位決定戦でグリーンランドに敗れています。アメリカが人口56,000人のグリーンランドに負けるスポーツがあるのね、という感じです。グリーンランドって国ですらないですし。全ての競技を通じてグリーンランドが「American」な国際大会に出ていることを今回初めて知りました。同大会ではグリーンランドはコンスタントに3~5位に入っているようです。宗主国デンマークはハンドが強いようですからグリーンランドでも競技レベルの低い米大陸の大会では勝負になるようです。

さてそのアメリカでのハンドボールがどうやったら人気が出るかということですが、アメリカでのハンドボールの振興をはかる予算がどこからかたっぷり湧いたとしたら、欧州にいる二重国籍のハンドボール選手をかき集めればすぐに五輪予選ぐらいは突破できるようになりそうな気もします。五輪参加ができれば徐々に露出は増えるでしょう。ただ普及となると現在はプレー人口も少なくNCAAの種目でもない根無しで種まきから始めないといけないですから道のりはそうとう遠いとは思います。同じ五輪に出られていないにしても実業団など手厚くプレー機会もあり歴史のある日本とは格段の差だと思います。

教えていただいたところによるとハンドボールのコートおよびゴールはフットサルやローラーホッケーのコートと同じサイズとのこと。つまりフットサルのある国ならばあとはコートのラインを引いて、ボールさえ持ってくればすぐにプレー可能だという話です。ところがアメリカにはフットサルはほとんどありません。アメリカでも寒冷地ではインドアサッカーをやりますが、これはフットサルとは別物の規格。コートの大きさも違うし人工芝を敷いたものがほとんどかと思います。つまり場所をハンドボールに流用することはできない。ハンドボールはまず場所捜しからしてアメリカでは問題に突き当たるわけです。

-------------------以下訂正部分になります-------------------

で、そもそもの話としてアメリカでHandballというと日本で当然想定する五輪スポーツとしてのハンドボールではなく、別のスポーツを想定することの方が多いようです。五輪ハンドボールはTeam Handballと表記される。私個人ではその素手でやる壁打ちテニスのようなHandballの方も実際に見かけたことがないので実感がないのですがそちらはそちらでそれなりの数の大学がクラブ活動をしているようです。

このリンク先を見ると大学でクラブ活動でやっているところはそこそこあるようです。比較的大規模校が多いような。大規模校で施設面で余裕があるからできる面があるのかもしれません。いまアメリカの大学では優秀なアスリートをリクルートする目的でスポーツ施設の豪華さを大変なレベルで競っており豪奢なアスレチックビルディングが建ち、最新施設を備えたアリーナもどんどん建て替えている。その結果キャンパス内にまだ耐用年数のある若干古めのスポーツ施設が余っているところが増えているかと思います(どこも土地はたっぷりある)。そこをマイナースポーツがクラブ活動的に自由に使えるという場面は多い。たぶんそこにハンドボールの草の根活動も入っているんじゃないかなと想像します。リンクで紹介した各大学の活動状況のメモ欄を見ると設立3年目とか5年目というような記述が目立ちます。ごく最近になってハンドボールの草の根活動が活発化してきたということなんでしょうね。

で肝心の五輪ハンドボールの方はというと、米五輪スポーツの統合公式サイトからたどっていくと米国内のクラブのリストがありました。大学のクラブと一般のクラブ活動をしているところを併せて全米に40~50チームほどが点在。地区もバラバラなので対外試合も多くはできなさそうです。完全に憶測で各クラブ平均30名がアクティブに活動しているとして換算すると米国内の実働選手は1500人というところでしょうか?他に活動基盤がないとしたら、この規模で試合もあまりできないとなると総人口5万人のグリーンランドに負けるのも致し方ないのか。

それでもクラブ名を見てるとDC Deplomats(外交官)、DC Silencers(銃の消音器、たぶんFBIのOBを意識?)などと気の利いたチーム名のクラブもあったり、楽しんでプレーを続けている方もいるのだろうなと想像させてくれます。

米ハンドボール協会が作成したらしいプロモビデオで「いまアメリカで一番早く成長しているスポーツ」というコメントがついていました。「一番成長」というのは過去サッカー・ラクロス・ラグビー・Xスポーツ・アリーナフット・ビーチバレーその他数々のマイナースポーツが名乗ってきたことで、どの部分をどうやって切り取るかでいくらでも言えることなのでさほどの意味はないですけれど、それでも嘘は言えないわけでなんらかの伸びはあったのでしょう。独自のスポーツを含めて数限りないスポーツ活動を楽しむ国であるアメリカでハンドボールがこれからどういう形でかその存在感を増していく可能性は高いと見積もることはできませんが、草の根で楽しんでいる方が確実にいることと五輪スポーツであることの強み(日本でのような圧倒的なアドバンテージにはなりませんが)がうまく噛み合ってなんらかの動きになることもまったく否定することはできないんでしょう。