女子プロサッカーのNWSLで大型トレードが発表されています。Western New York FlashのAbby WambachとSeattle ReignのSydney Lerouxの1対1の交換。米女子代表のフォワード同士の交換というのが表面上の話です。

が、です。実際にはこれはトレードでもなんでもありません。Abby Wambachが既に今季NWSLではプレーしないと宣言しています。Wambachは現在34歳、この夏の女子W杯の頃には35歳に。今季NWSLでプレーしないと言うもののひょっとしたらもう二度とNWSLではプレーしない事だってあり得る状況です。ですのでトレードだと考えれば24歳ここから脂の乗ってくるLerouxの放出はSeattle側の丸損であります。なのになぜこれをやるかというとNWSLの創設当時の選手初期配置の問題に遡ります。

NWSL創設当時に運営側がかなり恣意的に選手の配分を行いました。Wambachを出身地間近であるWestern New Yorkに配分したのと、Alex Morgan始め好選手をPortland Thornsに集中。この2チームのみが大型スタジアムを持つためここに資源を集中投入して動員の数を持ち上げようという意図がありました。創設当時はまだWambachがダントツの女子サッカーの顔でそれも地元ということで優遇されてWestern New Yorkに来た。その恩恵の裏返しでFlashだけは米女子代表のメンバーは2名配置、あとのチームは3人を得たのです。

そういう経緯があったのですがWambachがプレーしないと言い出した。これではFlashに残る米代表の主力はCarly Lloydだけになってしまう。これじゃNWSLの動員政策に大いに狂いが出る。Wambachの地元動員パワーの補充には無理でもたぶんこの夏女子W杯でスターになるであろうLerouxを入れてテコ入れしようという意図と受け取りました。


で表題の件なんです。その昔、女子サッカーがプロリーグを始めた頃にはそれは女子アスリートとしては夢だったはずです。Mia Hammたちの頃は皆がプロリーグができることに感激してなんでもやるという姿勢で臨んでいたものです。WUSA, WPSと二度の女子プロリーグの崩壊を経て三度目のいまのNWSL。それにWambachは出ないとそっけなく拒否してしまうようになってしまったんですねえ。NWSLは米サッカー協会などからの資金提供もあって自分がヒーコラW杯年までプレーしまくらなくても潰れないと見越したのか、自分の地元のチームから離脱してしまう。なんか違うんじゃないかなあと思うんですが。

Wambachの離脱はW杯への準備や自分のコンディションの調整が難しくなってきたこと以外にも、Flashの同僚であるLloydとの確執(前任代表監督がWambachを代表の主力から外そうとしたときにLloydはそれを支持したとされます。その後Wambachは監督をクーデター追い落とし)もあるんでしょうし、Wambachの私的パートナー(同性婚妻)のSarah Huffmanが2013年はFlashのチームメイトだったのが2014年シーズンはPortland所属になって離ればなれになっていたのも影響したのかしなかったのか。いずれにせよ極々私的な理由しか今回の離脱にはないのです。同僚が嫌い、嫁さんと別居が嫌、疲れるから代表だけにするわ。その昔、女子リーグを成立させるためならなんでもするといった初期の選手達とは心の在りようが随分変わっちゃったんだなあと思わせられます。そういう贅沢が言えるだけの女子スポーツの状況になったことを喜ぶべきか、それとも女子サッカーで数少ないお金も知名度も得たWambachの自分勝手と取るか。W杯での米代表チーム内の微妙なひび割れにならないと良いですけど。