明日はカレッジフットボールのNational Signing Day。そちらも気になりますし、NFL Cleveland BrownsのQB Johnny Manzielが生活改善のためにリハビリ入りするというのもけっこう笑えてちょっとあげつらってみたい気もしたのですが、別の話を入れてみようと思います。

女子バスケWNBAのPhoenix Marcuryのスター選手であるDiana Taurasiが来るWNBAのこの春秋シーズンに出場しないと宣言しています。理由はWNBAのオフシーズンに行っていたロシアのチームとの契約でWNBAではありえない巨額のサラリーを貰えることになり、そのチームの要請に沿ってWNBAには出場しないというのです。Taurasiはカレッジ時代、女子バスケの絶対最強ブランド校であるUConnで三連覇。その後プロ入り。その後も順調なプロ生活を送ってきた選手ですが、なんでもWNBAから貰えるサラリーは昨シーズンで$107,000。対するロシアリーグの提供するサラリーは$1.5 million。実に15倍です。WNBAに15年間所属して貰える金額と考えても良いでしょう。現在33歳。女子バスケ選手の選手寿命はいろいろ微妙な点もあり、現役を退いた後はさらに金銭的には普通の人化が見込まれる中、キャリアの最終段階に向けてお金の方をとったということでしょう。経済合理性はある話なのでそれ自体はなんら問題はありません。

たぶんこれが問題になるのはTaurasiのようなトップ選手でもWNBAではその程度しかもらえないんだね、ということを知らしめた点でしょうか。じゃあ他のもろもろの一般選手は幾ら貰ってるのさ?という。対してロシアリーグは誰がそんなにお金出しているの?とかそんなに払ってもペイするほどロシアリーグは金回りがいいの?というのも不思議な感じです。

WNBAはその成立時からサラリーは抑制的な政策を維持しています。WNBAが設立された頃は先行して興業していたABLという女子プロリーグがありました。WNBAは女子プロバスケリーグとしては後発で、しかしながらサラリーはABLよりずっと低額で進出してきたのです。ところが男子NBAチームやスター選手とのコラボを通じたセレブ待遇や、ヘアメイクさんをチーム側が提供する、NBAチームの施設をオフシーズンに利用できるから施設が美麗など女心に忍び入るうまいやり方で好サラリーを提供していたABLを駆逐してしまったという歴史があります。ABLが潰れてしまってからはもうWNBAがサラリーで選手を厚遇する理由は消滅しましたし、実際WNBA自体が儲かっているというわけでもないので選手会側も強硬なサラリー交渉などできず今に至っているというわけです。

WNBAはサラリーは低いですがシーズンはNBAのオフシーズンに短期間行われるため拘束期間は短い。シーズンがいわゆるバスケシーズン=冬から外れているので、好選手はWNBAのオフに海外のリーグに参加して稼いだり、国内でもカレッジチームにアシスタントとして参加したりというような副業を持てる状態ではありましたからWNBAでのサラリーだけが収入というわけではありませんでしたが、WNBA自体は決して女子選手にとってのドリームジョブというわけではなかったわけです。Taurasiを始め米代表級の選手達は海外リーグから引く手あまたでオフシーズンは海外で活動するのが当たり前でした。

その流れでロシアリーグがTaurasiに好待遇を与えたという話なわけです。ロシアの方の事情がイマイチ掴めないのでどれほどその待遇が安定的に与えられるのかはわかりませんが、Taurasi個人としてはとにかくWNBAの15倍のサラリーなんですから、一年間だけロシアリーグがもってくれればそれで良いわけです。ロシアリーグがWNBAの競合リーグとなってWNBAのスターを次々とさらっていくようなことになればWNBAもサラリー政策を改めないといけないと考えるようになるのかどうか。ただ前述の通りWNBA自体が儲かっているわけでもないのでWNBAとしても大きなサラリーアップに踏み切るとは思えないわけですが、外野や選手達からの待遇改善圧力は高まってしまうのかも。

女子プロスポーツという分野は難しいです。アメスポの中では女子スポーツというとサッカーとバスケが現在プロリーグがあるわけですが、そこの選手になりたいという供給はたっぷりあるのに見る側=お金を払う側の需要はそれをまかなうほどはない。経済原則に則れば選手のサラリーが低くなるのは当然の環境です。それに文句を言っても始まらないのですが、男女格差を是正するために大学では女子選手を大量に生産しています。