今年から優勝者を決める方式を変えたアメリカのモータースポーツ最大手NASCAR。Chase=プレーオフ自体は今季で施行11シーズン目ですが、今季からは最終レースまで優勝者が決定しない方式。欧州F1も最終戦のポイントをダブルにする(なんかバラエティクイズ番組みたいですが)方式を今季から採用したそうで各ジャンルともシーズンの興味を引っ張るために原則を崩しても試行錯誤している様子がうかがえます。

NASCAR Chaseの今季の仕組みでは今日午後の@Phoenixでのレースを終了した時点での上位4選手が次週の最終戦を前にそれまでのポイントを全部チャラにして最終戦の一発勝負の優劣で年度優勝を決めるというもの。それがいいのか悪いのか微妙ではあります。上位4人に残る可能性のある8人のうち今季未勝利のドライバーが2名もおり、現在それぞれ3位と5位。つまりは未勝利ドライバーが年間優勝者となる可能性がまだかなりあるということです。今季Sprint Cup Series(最上位カテゴリ)は全36レース(34レース消化)。F1のように勝利者が偏っているわけではなく今季の最多勝は6勝のBrad Keselowski、4勝以上あげたドライバーが6名と分散。1勝でもあげたのは13名。なのに未勝利のシーズン王者が出てしまうかもという危機(と表現しておきましょう)です。Chaseに入ってから何度か足切りを実施するため途中1レースでも事故で大きくポイントを落とすといきなり苦しくなるという仕組みで次々と勝利数の多かった人気ドライバーが脱落して、Chaseに入って以来無難に過ごした未勝利ドライバーが好位置につけているという具合。プレーオフ方式変更して初年度にいきなりダメ出しされかねない事態になっているというわけです。1949年より続くNASCAR最上位カテゴリの歴史上、未勝利の年間優勝者は一度もありません。

で、しばらく前にコメントでNASCARは野蛮で許せないということを意見していただきました。そのときは車のぶつかり合いはアリとして、レース外の乱闘はそんなに多くないですよ、なんてお返事したのです。ところがここ数週間レース後のドライバー・スタッフの乱闘が多発中です。上で指摘した通り一度のリタイアがChaseの足切りに引っかかる=年間勝者を逃すだけに、ライバルによる接触や幅寄せに神経をいらだたせることになっているわけです。先週のレース後に乱闘となった当事者のJeff Gordonが現在4位、Keselowskiが7位。Gordonは最終戦への4人の足切りのギリギリ。Keselowskiの無謀な突っ込みで先週スピンさせられたと思っているようなのでGordonやそのチームメイトがKeselowskiにレース中になんらかの報復を仕掛ける可能性が取り沙汰されています。こういう遺恨がらみは興味はそそるけれどどうかなーと。プレーオフが機能しているからこの時期になっても熱くなっているとも言えます。昨年のこの時期はもう2名しか優勝の可能性はなく、その2名も差がはっきりついていました。それからすると機能していると言えるし、他方上で述べた通り未勝利ドライバーの年間優勝のチャンスがまだ現実的にある。GordonとKeselowskiが熱くなってポイントを削りあえば3位5位で堅実なレースを重ねている未勝利ドライバーたちが漁夫の利を得て新Chase方式の問題点をクローズアップすることにもなる。

まあそもそもプロスポーツのプレーオフなんていうのは盛り上がれば勝ち、普段見ない人にも興味持たせれば勝ちという代物。普段NASCARのことなんて書かない私がこんな記事を書いている時点で既に新Chaseは釣りとしては成功しているとはいえるわけですが。