野外ラクロスのシーズンです。カレッジではNCAAトーナメントが開幕、プロリーグMajor League Lacrosseの2014年シーズンが進行中です。MLLでは昨季14戦全勝でレギュラーシーズンを終えたDenver Outlawsは今年も開幕から4連勝でシーズンスタート、2012年シーズンから通算レギュラーシーズン23連勝継続となってます。レギュラーシーズンとわざわざ断ったわけですからこの期間中にプレーオフでは敗戦あり。

今季もMLLは8チーム構成ですが新チームが加わっています。Florida Launchと名付けられた新チームが加入。同時にカナダ側の唯一の参加チームだったHamilton Nationalsが今季休業して8チーム構成を保っています。Nationalsは早ければ来季復帰予定。新チーム参入をリーグ拡張せずに達成しているというわけです。場所はPalm Beach郡=Miamiの北ハイウェイを飛ばして30分強。過去にはこのエリアにはサッカーMLS Miami Fusionが存在しましたが撤退済み。また女子サッカーWPSのmagicJackも同エリアで活動しましたがリーグ崩壊に伴いチームは1年で消滅しています。地元でメジャースポーツといえるのはFlorida Atlantic大のフットボールぐらいという地区、少し距離はありますが心情的にはMiamiのNFL/NBA/MLB/NHLの各チームを地元と認識している土地と思います。ただそのMiamiのメジャースポーツ各チームも決して動員が強いわけではない。MLB Miami MarlinsはMLBで動員で下位常連ですし、老舗のNFL Dolphinsも決して動員の強いチームではないです。カレッジフットボールの強豪Miami Hurricanesはその実績と全国的な人気・知名度と比較するとスタジアム動員の弱さでは全米ワーストクラスです。そういうスポーツ動員でイマイチなマーケットにわざわざプロラクロスが参入したというわけです。

マイナープロリーグで財政的な足腰も強いとは思われないMLLが拡張先に選んだ理由ですが、中高校のラクロスの普及が進んでいる地区だから、というのが第一。南フロリダは以前も指摘したとおり東部から移住した人が多い地方です。それゆえ住民のかなりが未だに東部のチームを我がチームと認識している。いまでこそ動員好調のNBA Miami Heatも以前はスタンドに空きが目立つのが、New York Knicksがやってくればアリーナが埋まったものです。そういう東部志向と憧憬がある中、東部でやるスポーツとして人気スポーツだったラクロスも南フロリダに広まっているという特色があったようです。

そしてそういう事情がプロラクロスチームを維持できるほどに地元の興味を惹いているのかを試すために昨年はMLLオールスター戦を同地で開催。そのときの動員に自信を持ったMLLがフロリダの新チーム発足を発表したのが昨秋。同時にHamilton Nationalsの2014シーズンのリーグ参加停止を発表、23人のNationalsの選手は新チームに派遣。実質的には移転ですがそうは表現せず。Nationalsは2015年以降にリーグ復帰を前提とし活動停止、同時に新チームは昨季MLL3位でプレーオフにも進出したNationalsの選手を譲り受けることで即座に勝てるチームとしてリーグ参入することとなりました。マイナープロリーグのテリトリー拡張手法としてはいいやり方でしょう。似たパターンとしてはサッカーMLSがSan Jose EarthquakeをHouston Dynamo(発表当時はHouston 1836、ひどい名前です)に移転、San Joseを後年復活したケースがあります。オールスター戦をマーケットリサーチに利用したのも賢いやり方か。

8チーム体勢を維持したMLL。今後のリーグ拡張見込み先としてはAtlanta, Dallas, Houston, Indianapolis, Minneapolis, Nashville, Los Angeles郊外, Orlando, Pittsburgh, Salt Lake City, Virginia Beachと具体名が挙がっています。うーんサッカーMLSの既存マーケット・拡張予定先マーケットにかなりかぶるのが気になります。ラクロスの競技人口は過去10年強で三倍以上になったとされ、その伸びはアメスポの中でも特筆ものとなっています。その勢いの乗って投資家を募ってリーグ拡張と黒字化を目指していくことになるんでしょう。ほぼMLLに5年先行して発進したサッカーMLSは舵取りを大きく誤ることなく地道に運営をして数年前にやっと安定軌道を確保したところ。MLSの成功をMLLも得ることができるのか。それともサッカーと違ってスポーツの全国普及が極端に偏っているラクロスの状況が足を引っ張ってMLSのようなわけにはいかないのか(実は西海岸などで興業するLXM Pro TourというMLLのオフシーズンにプレーするラクロス組織もあるんですが)。さらに言えばMLLの後を追って15人制ラグビーユニオンの新ビジネスNRFLだって虎視眈々とアメスポ産業の残り少ないパイを狙って発進してくるわけで、マイナープロスポーツビジネスの競争はなかなかに熱くなりそうです。