北中米カリブ地区CONCACAFの国地域別大会Gold Cupの準決勝二試合がNFL Dallas Cowboysの本拠地Cowboys Stadiumで行われ、米代表はホンジュラスを3-1で下して快勝。もう一試合は人気のメキシコ代表が2-1でパナマとの激戦に敗れて決勝戦に届かずとなっています。動員力や視聴率でホスト国である米代表を上回る裏ホスト国とも言えるメキシコの敗退はビジネス面では傷手になりそうです。決勝戦は日曜日午後に地上波FOXでの放送。

過去三大会の決勝のカードはメキシコ対アメリカの対決が続いていましたし、今大会も過去の大会と同じくこの両国はほぼトーナメント決勝でしか対戦しえない(どちらかがグループリーグで大崩れして3位でトーナメント進出しない限り準決勝・準々決勝では対戦が発生しない仕組み)ように工夫されていたのです。そこまで仕組んでも対戦できないという結果になってしまいました。この日の準決勝はダラス、決勝はシカゴSoldier Fieldと在米メキシコ人人口の多い都市での試合を予定していたのですが、メキシコ敗退で決勝戦の入りが心配です。

この日の準決勝もホスト国米代表の出場する第一試合の方では客席の入りは五割も入っているかどうかという入り。それが第二試合のメキシコ代表の試合ではすっかり埋まっている。過去にもそんな風景は私はGold Cupでは見てきているのですが、それでもやはりメキシコ代表ファンの多さ熱さがアメリカのサッカーファンを大きく凌いでいるのをこういう風に見せつけられると、まだまだアメリカのサッカーの進展は先が長いなということを確認させられるところです。

試合内容は二試合ともなかなかに見所のあるおもしろい試合で特にメキシコの反撃を凌ぎきったパナマの大健闘ぶりはこの地区でのアメリカ・メキシコの二強体制に続く国としてパナマが常連になってきた勢力図の変化を改めて示しました。


さて表題の件ですが、先にも述べた通り決勝戦はFOXが地上波で放送する予定です。Gold Cupが地上波放送されるのが実は今回が初めてのこと。FOX系列は一昨年2018年と2022年のW杯二大会の米国での放映権を獲得済み。来年のブラジル大会まではESPN系がW杯放映権を握っていたのですが、ESPN系に競り勝って得た放映権です。五年後のロシア大会に向けて高額の放映権料をペイするためにもFOX系列でのサッカー放送の様々なノウハウの充実は急務です。FOX系列では地上波FOXの他にFOX SportsおよびFOX Soccerを持ってはいます。が、FOX Soccerはあまりにもサッカーに特化してしまったためサッカーラブな人たちしかチャンネルを合わせることのないマニアックなチャンネルになってしまっておりW杯放映では使いにくいという弱点を抱えています。FOX Sportsはローカル局の集合体でこれは全国放送に向かない。視聴率面でもFOX Soccerはベースとなる配信家庭数も限られており苦しいのです。Gold Cupは準決勝まで全試合このFOX Soccerで放映したのですが、決勝だけは一足飛びに地上波のFOXで視聴率勝負をしてみようというのが今年のGold CupのTV放映の新味でした。一足飛びというかFOX系列にはそこそこの配信家庭数を持つスポーツ局が欠けているのでFOX地上波に一足飛びしか他に選択肢がないのです。

そういう系列事情もともかく過去三大会と同じくメキシコxアメリカなら日曜日の午後の地上波で視聴率も良い線まで行くのではないか、という実験の意味もあってのGold Cup決勝地上波放送だったはずです。しかしながら視聴率でも動員力でもホスト米国以上の強みを持つメキシコ代表の準決勝敗退でFOXの視聴率実験が大きな数字をたたき出す可能性は薄れたと考えて良いでしょう。


FOX系列は他系列に遅れをとってしまいましたが来月8月半ばにFOX Sports 1(略称FS1)がスタートする予定であることを盛んに宣伝しています。スポーツ専門局でESPNの独走を長年許してきた他系列がNBC Sport Network、CBS Sports Networkをここ数年立ち上げてきていたのにさらに遅れてやっとFOX系列のスポーツ専門局がスタートするわけです。FOX系列ではサッカー専門局FOX Soccerを通してサッカーを長年アピールしてみたもののマニア層の外には浸透できなかったことを失敗と認めたようでFS1の立ち上げ後、FOX Soccerは廃局となる予定です。FOX SoccerのメインコンテンツであったEPLの放映権がNBC系列に奪われてFOX Soccerの存在意義が大きく後退したという言い方も可能でしょう。

このサッカーコンテンツの各系列間での奪い合いとチャンネルの消長はまた別途整理して語ることもあるかと思います。