金曜夜CONCACAF地区W杯最終予選 米代表@ジャマイカ戦がありました。結果はロスタイムに入っての決勝弾で2−1でアウェイ勝利。1−0巡航でアウェイでの勝ち点3を確保かという展開から、レギュレーション時間切れ間近の時点でジャマイカの逆襲を受け1−1。最終予選の争いの激しい中勝ち点2喪失かというがっくりの展開。そこから4分のロスタイム、左側から持ち込んだMichael Bradley (Roma)からのパスをBrad Evans (Seattle Sounders)が即座のスピンからゴール上段へシュート。これが決まって勝ち点3ゲットです。MLSでしぶとく実績を積み重ねてきていたものの代表では招集されても出番の機会は限られていたEvansがなぜかこの試合で先発起用。結果的にはそれが当たって勝ち点3を得て最終予選三連戦の初戦を飾りました。これがEvansにとっては代表初ゴール。


試合経過は上記のように終盤にどたばたしてぎりぎりの勝利を得たという経過なんですが、試合内容の面では大いに評価できる試合だったと思うのでその点を指摘しておきたいです。

なによりよかったのがチームに徹底された球離れの良さです。これは代表に限らないんですが、アメリカサッカーに共通の大きな悪癖としてやたらボールを持ちすぎるという問題があります。これは本当にちょっと気を許すとすぐ持ちすぎて自らチャンスを潰すことがあまりにも多い。サッカー教育的に間違っていると言えるアメリカサッカーの大問題です。やってみれば当然誰でもわかりますが、そりゃあ美味しいタイミングでボールを蹴りたいのはわかります。ですがサッカーを十分な量観戦すればそれは許されないのだということもまたわかるはずだと思うのです。私の個人的感想としては、アメリカはサッカーの競技人口は多くなってもその当のサッカー選手たち自身が十分な量のプロサッカー観戦をしてきていないのが問題なのではないかと思っているのです。現在の現役の選手達が子供の頃にはアメリカで日常的にサッカーの放送なんていうのはありませんでした。良質の欧州サッカーの放送なんていうのもマニア向けの有料チャンネルではあっても一般の人間の目につくところにはありませんでした。サッカーを見て育っていないためにそこでそれ以上持ってもどうしようもないだろ?という当たり前のことが感覚的にわかっていない人が圧倒多数なのではないかというサッカー文化的な間違いをしばしば感じるところなわけです。

翻ってこの日の試合は序盤からチーム全体の球離れがよく、それを実現するために追走・併走する選手が良い距離を保っていました。さらに普段見られないミニサイドチェンジとも言うべきスピードが乗ったままでの斜めパスも多用。これがいいアクセント。また右サイドからサービスを上げるGraham Zusiにしても明かに普段より早く見切ってサービスを上げていた。こういう努力が序盤だけでなくしっかり後半まで続き、チームとして意思統一ができた試合だったなという意味で大いに評価したい試合だと感じました。サッカーの場合、そうした努力が必ずしも得点につながるというわけではないですが、チーム作りとして正しい意識がやっと見える試合にたどりついたという意味で評価したいです。最後の最後のEvansのスピンシュートにしても、欧州サッカーなら普通のことでしょうが、アメリカサッカーではあそこで一回足下にセットし直して打とうとする選手の方が多いのもので、Evansが躊躇なくフルパワーでなくてもターゲットを目で捉えなくてもとにかく打ったという意識もこの試合全体で見せていたコンマ何秒を捉える意識の続きかなという気がします。最初のゴールへのサービスもZusiの早めのサービスから生まれたものです。


CONCACAFの最終予選は6チーム出場、3.5枠。このジャマイカ戦での勝ち点3およびジャマイカの勝ち点0で米代表はかなり楽になりました。今月の残り二戦で予選全体の帰趨が見えてくるでしょうが、この日のような試合をしていればそんなに簡単には負けないんじゃないかと思いたいです。

尚、この日の試合の放送はBeIN Sportsというマイナーサッカー専門チャンネルでの放送。見た人の数は極々限られるでしょう。