カレッジバスケットボールNCAAトーナメントの一回戦が今夜からスタートですが、先日も説明しました通り本格開幕は木曜日から。今夜の一回戦二試合(および明日夜の二試合)はマイナー局(truTV)での放送でもありどうしても前座試合というイメージが抜けないし、実際に人の目にもさほど触れる試合でもありません。

同時刻には第三回World Baseball Classicの決勝戦=ドミニカ共和国対プエルトリコの一戦がMLB Networkで放映。MLB NetworkとtruTVだと力関係はtruTVの方が全番組平均だと視聴率は上のようですが、それはスポーツ番組で稼いだ数字ではないのでスポーツファンが普段truTVにチャンネルを合わせているわけではないという問題があります。なにせ何百チャンネルとチャンネルがあるので普段合わせないチャンネルは局名がわかってもチャンネルがわからなくて探すのに苦労します。truTVにとってはほぼこのNCAAトーナメント放送が唯一のスポーツ放送と言っていいです。


さて表題の件。昨季のNCAAトーナメントMarch Madnessに本命として登場、見事期待通りの圧勝劇で次々と難敵を葬って優勝したKentucky Wildcats(この日の試合前までで21勝11敗)の試合が今日ありました。登場したのはNational Invitational Tournament (NIT)。NITは歴史的な経緯を無視して現時点だけで言えばNCAAトーナメントに出場しそこなった残念組が集うトーナメントです。昨季の覇者Kentuckyは今季も多くの高校最高級選手を一年生として迎えて連覇の期待もふくらむプレシーズンランキングで3位発進したものの、その後負けがかさみ、また今季後NBAドラフト上位指名が確実とされるPF Nerlens Noelが膝の靱帯損傷でシーズン途中で離脱。シーズン終盤に当時全米ランクNo. 11だったFloridaを破ってなんとかNCAAトーナメント本戦出場へ望みをつないだものの続くSECトーナメントで初戦に大惨敗を喫した悪印象もあって選抜漏れ。残念賞トーナメントのNITでトップシード校として出場することになったのが今日の一戦です。放映はESPN。放映が視聴者の圧倒的に多いESPNでの放送で、ネームバリューの高いKentucky戦ということで、NCAAトーナメントの一回戦よりも視聴者数は高いのはほぼ確実のはずです。二連覇を期待されて発進したシーズンがNIT行きでがっかりのところに、さらに悪いことに本来なら上位シードのKentuckyのホーム開催のはずが、Kentuckyのホームアリーナ=Rupp Arenaは今週末のNCAAトーナメントの会場でもあるためホーム開催ができず、NIT最下位シードのRobert Morris University Colonials(この試合前までの戦績で23勝10敗)のホームに行っての試合となりました。

Robert Morris University。失礼ながらまったくどこにある学校か知らなかったです。Colonials(植民地入植者)というぐらいですからきっと合衆国独立当時の13州のうちのどこかにあるんだろうなあぐらいは想像できましたが、ペンシルベニア州ピッツバーグ市近郊にあるようです。この試合が大変な試合になってしまいました。Robert Morrisにとっては降って湧いたカレッジバスケットボール界の最強ブランドにして最多勝チームKentuckyをホームに迎えるビッグゲームとなったわけです。会場は超満員、日本だったら消防法を理由に閉め出しされるような人も多かったかもしれない通常キャパを超える入りで試合前から大盛り上がり。試合が始まるとKentuckyよりすべてのポジションで圧倒的に小さいRobert Morrisの選手たちが気合い満点で挑みかかってくる熱い試合となりました。これがカレッジバスケットボールの醍醐味なんですよね〜。一発の勝負に賭けられる、アンダードッグの意地が炸裂する試合。全ての学校に一発のチャンスが与えられる。やってみなければわからないというスポーツの醍醐味と楽しさをひしひしと感じられる熱のこもった試合にになりました。Robert Morrisという学校にとってはこれは千載一遇のチャンスの試合。選手・観客一体になっての勢いでエリートKentuckyを圧倒して試合開始から飛び出して10点リードまで行く。Kentuckyが押し返して1点差でハーフ。後半もこの一発のチャンスに賭ける選手の熱さは続き、それだけふかしているからさすがに疲れてきているであろう終盤もホームの観客に後押しされて最後までボールに食らいつくしぶとい戦いぶりで接戦を制してKentuckyをNIT一回戦敗退へ追い込みました。

だからスポーツはやってみなければいけないのですよ。私の最も愛するスポーツジャンルであるカレッジフットボールの方では「やらなくてもマイナーカンファレンスのチームは弱い」と真顔で言い放って試合を組むことすら拒否して恥じない人たちが少なからずいるのですが、そうじゃないんだ、と改めて言いたくなる試合を見せてもらいました。楽しかったです。


Kentuckyにとっては失望のシーズンがここに終わりを告げました。以前記事に書いているのですがこのオフにはまたKentuckyにすごいスーパー高校生たちが入ってきます。今季のメンバーのうち怪我で欠場中のNerlens Noelは怪我にもかかわらずNBAドラフトで5位以内指名の可能性が高いとされるのでドラフト行き。SF Alex Poythressも今季のKentuckyの一年生の中では一番安定していたのでこれもNBA行きか。が、あとのG Archie GoodwinやC/PF Willie Cauley-Steinはその素材を磨ききれないままのシーズンとなってしまったところどうするのか。以前の記事で書いたように押し出されてしまうのか。来季最強リクルートクラスが加入してくる中、もし昨オフの期待の星だったGoodwinや7フィート超のCauley-Steinが残るとなると来季のKentuckyはとてつもない才能レベルと分厚い戦力となるはず。なんでもさらにまだもう一人全米ナンバーワン高校生PFが明日、大学の行き先を発表するそうでその最終候補はKentucky, Kansas, Texasとのこと。もしこれもKentuckyに来たら「カレッジバスケットボール史上文句なしの最強リクルートクラス」なんだそうです。今日はNIT一回戦で敗北という失敗シーズンにさらに泥を上塗りする試合ではありましたが、次回Kentuckyがコートに登場するときはまた全米制覇最有力候補として登場することになりそうです。