Ohio State Buckeyesが2018年と2019年にTexas Christian (TCU) Horned Frogsとの対戦を発表しています。それぞれのホームでの各一試合の開催。なかなかに味わい深いものがある発表ではないでしょうか。

表題にも掲げた通りの公の問題発言でOhio Stateの学長が小規模校であるTCUをBCS優勝戦にはお門違いと堂々とけなしたのはまだ記憶に新しいところ、それが二年後のいまになって対戦発表。それもその発表に付いてきたADのコメントは「TCUは優秀なフットボールチームとして存在し続けており、全米トップクラスの学校である」と言うもの。遡ること数週間前にはOhio Stateは将来のnon-conferenceスケジュールの充実化を目指すとアナウンスしていた、その最初の具体的発表の相手がTCUだったというのもなかなかにヒネリが利いています。発言当時TCUのADは即座に反応して「Ohio State対TCU どこでも受けるよ さあやろうじゃないか」と応じていました。


リンク先の二年前の記事でも検証していますが重厚長大側の代表校であるOhio Stateのスケジュール強度が当事者たちの思い込みとは裏腹に、当時からマイナーカンファレンスの雄として活躍していたTCUやBoise Stateとほとんど変わらないスケジュール強度でしかない、という事実をカレッジフットボールファンに知らしめる機会を与えた事件でした。当時まだメジャーカンファレンス中のメジャーだと信じて疑っていなかったBig Tenの各校にも実はBig Tenのスケジュールは緩いという事実を突きつけた機会となりました。そういう意味であの問題発言はあってよかったと振り返って歴史的には評価できますが、そのOhio Stateが公に宣言してnon-conferenceスケジュールの組み方を過去から改めていかねばならなくなった、この二年の差を様々感じさせる発表であるとも言えます。


この二年の間にTCUはマイナーカンファレンスから移籍活動を繰り返して今季からはBig XIIのメンバーとなりました。移籍を決めた時点ではまだBig XII自体が崩壊危機の過程にあり将来の見通しがつかなかったのがこのオフにBig XIIの存続が保証される大型の放映権契約も確定してTCUは目出度くメジャーカンファレンスの一角に住処を見つけたことになりました。Big XIIのTexas, Oklahomaなど強豪校との将来の対戦が保証されてもはや貧乏人の小娘との対戦を繰り返す学校ではなくなりました。その将来が見越せることになったのでOhio Stateがスケジュールのグレードアップの相手としてTCUとの対戦を受諾したということになります。

Ohio Stateの側からすると現行のBCSシステムからのポストシーズンの仕組みの変更と、Big Ten自体の地盤沈下から過去のような弱い手前味噌なnon-conferenceのスケジュールを繰り返していては新しいポストシーズンの争いで大きく出遅れる怖れがあることからの変更と言えます。Ohio Stateの将来のスケジュールを見ると2014年と2015年にVirginia Tech、2016年と2017年にOklahomaとの対戦こそありますが、これが2014年からの次期ポストシーズンに十分かどうか。16-17にOklahoma=Big XIIとの対戦に次いで2018年2019年両シーズンもBig XIIのTCUを選んだ辺りは若干なにか臭う気がします。メジャーカンファレンスの中で最も将来の立場が脆弱なACCからは対戦相手を選ばないのは賢明としても連続でBig XIIをnon-conferenceスケジュールの目玉にという偏りはどう解釈すべきでしょうか。Rose Bowlを通じて特別のつながりのあるPac-12とスケジュールを組まない。過去もほとんど対戦のなかったSEC校とはボウルで決着をつけるという過去のままかこちらとは没交渉のままのようです。

Non-conferenceスケジュールが甘いのはOhio Stateに限ったことではなくBig Ten校はこの傾向が強い。先日Notre Dameとの定期戦が途切れることになるという観測が浮上したMichigan辺りも将来のスケジュールを見るとOhio State以下のスケジュール強度の対戦相手を並べているように見えます。興業的には知名度のあるNotre Dameとの定期戦があったので見映えは悪くなかったのが、Big Tenの弱体化より先に弱体化したNotre Dame頼みのスケジュールでは強度を保てない。そのNotre Dame戦もなくなる。Big Tenの弱体化がどれぐらい続くのかはやってみないとわかりませんが、新システムではnon-conferenceスケジュールの弱い学校は最初からプレーオフに進出争いで出遅れたことになる。またスケジュール強度の査定は「対戦相手の相手」のグレードも問題になるため多重に影響があるBig Ten内他校のスケジュールも上がってこないことにはOhio Stateだけ、Michiganだけがスケジュール強化しても十分でない可能性がある。そんなこんながあってBig Ten各校はこれからスケジュール強度を上げるべく右往左往するのでしょう。

これで連想するのが現在最強カンファレンスであるSECのこと。Big Tenも十数年ほど前まではいまのSEC並にカレッジフットボール界の最強カンファレンスを自認していたわけです。BCS時代が到来する前のBowl Alliance (1995-97年)やBowl Coalition (1992-94年)の時代にはほぼ全カンファレンスを無視してBIg Tenチャンピオンが全米優勝と認められた時代もあったのです。BCS時代になってからも2006年のシーズンにOhio StateとMichiganが共に全勝でレギュラーシーズン最終戦で対戦する時点で「どちらが勝ってもこの二校が最強だからBCS優勝戦はこのカードの再戦となるべきだ」という議論が真面目に語られていたわけです。それだけBig Tenのステータスは高かった。現実にはBCS優勝戦に進んだOhio StateはFloridaに惨敗、ランキング3位でRose Bowlに行ったMichiganも当時8位USCに完敗を喫してBig Ten幻想がガタガタに崩れたシーズンでもありましたが、どうも当事者であるBig Ten各校はあの結果を見てもそうは思わなかったようでその後もnon-conferenceスケジュールは弱くなる一方で手抜きを繰り返し、あっと思う間にBig Ten内にも弱い学校が続出してくるとカンファレンス全体が弱いカンファレンスになってしまったのです。そこにはかなりの驕りがあったのではないかと思われるのです。


SECの現在のnon-conferenceスケジュールにもそれと似た驕りを感じる面があります。どうもSEC関係者やファンは認めたがらないようですがここ数年のSECのnon-conferenceスケジュールは弱体化の一途です。今年のLSUのスケジュールなど見るとこれはちょっと酷いのではというスケジュール。昨年までと違ってAuburn, ArkansasとSEC西に落ちこぼれ校が発生しているためその傾向が強くなっています。Florida、South CarolinaはそれぞれFlorida State, Clemsonが定期戦として存在してそれぞれ健闘しているので見映えはLSUほど悪くないですがそれでもnon-conference戦にクオリティを求めたスケジュールとは言い難い。Floridaの11月のスケジュール(Missouri, Louisiana-Lafayette, Jacksonville State, FSU)などはどうしてこうなったのだ?と聞きただしたくなるスケジュールとなっています。Georgiaに至っては州内ライバル定期戦の相手のGeorgia TechがコケているのもあるしSEC東西の最弱候補四校との対戦もあり、スケジュール強度ではかなりひどいことになっています。往年のBig Tenの内弁慶ぶりにかぶるイメージが強い。もしGeorgiaが全勝でシーズン終盤を迎えてもスケジュール強度で比較するとたぶんマイナー校上位と変わらない、貧乏人の小娘発言があったころのOhio Stateのような勘違い状態になっているはずです。(今年は当時の相当するようなマイナーの雄がいませんが)

それもこれもSECが天下を獲り続けていればさしたる問題が表面化することはないと思います。他方、SECから二校がBCS優勝戦に進出した昨季は2006年のOhio State-Michiganの両校全米優勝戦進出論議を思い出すところですし、non-conferenceスケジュールの手抜き傾向の進行も過去のBig Tenの経過を連想させます。過去あれだけの格別ともいうべき地位にあったBig Tenがいまの位置まで落ちてきてしまったことを考えるとカンファレンスの栄枯盛衰がSECをいつの日にか捉えないとも限らないのかなと思えます。

プレーオフ形式にカレッジフットボールが変わっていく場面でもあり、カンファレンスの組み替えがまだまだ最終決着していない中のことですからSECの現在の驕りらしきものがSECの足を取ることになるのかどうかは見通せませんが、どこかの時点で問題が噴出しても不思議ではないところへSECが自らの意思で足を踏み入れているようにも感じます。

栄光から気づく間もなく転落した自らを発見したBig Ten、強豪から崩壊寸前まで行って踏みとどまった復活Big XII、我が世の春を謳歌しつつあるSECの隙、それらを長い大きな流れで感じるのもカレッジフットボールの楽しみのうちとも言えるのでしょう。