MLB San Francisco GiantsのMelky Cabreraがテスタストロン過剰との尿検査結果を受けて50試合の出場停止を受け、即座に執行。今日から出場していません。今日はGiantsはWasington Nationalsとの対戦。先発がGiantsがTim Lincecum、NationalsがStephen Strasburgとエース対決。どちらもポストシーズンを臨む中の注目の試合でしたが、急に発生したCabreraの出場停止の話題でエース対決がかすむことに。Cabreraは既に違反薬物の使用を認める声明を発しており事実関係については争われません。


Giantsの残り試合は45試合なのでMelkyはもう今季のレギュラーシーズンには出場できません。Giantsがポストシーズンに進んで総計50試合を消化すればポストシーズンの途中からCabreraは復帰できるということのようです(少なくとも現時点で紹介されている情報では)。Giantsは今日の試合開始前の時点でNL西でLos Angeles Dodgersと首位タイ。ワイルドカードでも混戦の上位につけておりポストシーズン登場は有力。もしMelkyがポストシーズンの途中で参加可能だとして、GiantsがMelkyをプレーオフロースターに留めるのかどうかはなかなか悩み所になりそうです。今季のCabreraは文句なしに戦力ではありますが、いま=八月中旬から九月全休した選手がいきなりポストシーズンで打てるのか。マイナーリーグも九月中はもうシーズン終了していますから調整の生のボールを打つ機会が乏しい。そういう選手をMLBの狭いロースターに残すのかどうか。Giantsにとってはなかなかに悩ましい問題になりそうです。


Giantsの悩みはそんなところですが、MLBの方の悩みはまた別のいやらしい悩みです。問題はMelkyの成績が良すぎることです。現時点での打率は459打数159安打の.346でNational Leagueの打率2位の成績で、違反薬物で出場停止になったMelkyがNL首位打者を獲る可能性が残っているのですね。

以下すべて私の手計算ですが、現時点でMelkyは今季501打席をこなしています。MLBの規定打席は162試合 x 3.1 =502.2=503打席が必要でギリギリ2打席不足となります。よってこのままなら規定打席不足でシーズン終了時の公式の打率リストにはCabreraは載りません。但し首位打者(及び出塁率首位)に関しては付則で例外規定が設けられているわけです。いわく不足打席分を打数に加え凡退したと仮定してもさらに首位であれば規定打席不足のまま首位打者として認められるという規定があります。

Cabreraの場合はチームの162試合消化時点での不足打席は2打席。よって2打数ノーヒットを加えて461打数の159安打の.345が最終打率の扱いとなる予定です。現時点ではNLの打率トップはPittsburgh PiratesのAndrew McCutchenの.359ですからMcCutchenが頑張ってくれればMLBの悩みはないですが、McCutchenがMelkyの最終予定打率.345を下回ると違反薬物使用選手の首位打者というまたもステロイド期の呪いに引き戻される事態となってしまうわけです。昨年もMVPのRyan Braunが50試合出場停止を喰った(のちに解除)ばかりで、今季また首位打者が薬物使用なんていうのはMLBにとっては避けたい事態。いつまで経ってもMLBはクリーンにならないというイメージばかりになってしまいます。MLBとしてはこの事態を避けるためにMcCutchenに頑張って貰わないと、というわけです。尚、Melkyの下につける打率3位のJoey Votto (Cincinnati Reds)はケガで長期欠場中で、今季のうちの復帰はチーム事情もあり微妙ですが規定打席を大きく切る可能性が強い。その下となるとGiantsの同僚Buster Poseyですが現在.331、さらにその下となるとDavid Wright (New York Mets)の.323。Melkyの.345まで上げるにはよほど好調にシーズン終盤に向けて打ちまくらないと上がらないはずです。というわけで現実的にはMcCutchenとPoseyがMelkyの首位打者獲得を阻止できる立場ということになります。Pirates、Reds、Giantsはそれぞれペナントやワイルドカード争いに加わっているため首位打者タイトル獲得のために主力選手を休ませるということはしにくいことにもなりそうで、その面でもMelky有利となりそう。


もうひとつ変化球を。MLBには引き分けがないためしばしば162試合を消化したあとに同成績のチーム同士がディビジョン優勝を決定するためなどで1試合を追加して戦うことがありますね。あれは制度上はレギュラーシーズンの試合として計算されるきまりとなっています。よってもしSan Francisco GiantsがNL西やワイルドカード争いで162試合消化後にタイとなった場合レギュラーシーズンの試合数が増える可能性があります。もしGiantsの試合数が163試合となった場合、Giantsの選手の規定打席は163 x 3.1 = 505.3=506打席が必要となり、5打席不足となります。その場合、Melkyの首位打者タイトル狙いの打率は5打数無安打を現在の数字に足して464打数159安打の.342となるはずです。レアな可能性ですがこの追加試合は2試合発生する可能性があり、その場合は8打席不足で.340まで落ちます。

さあどうなりますか。リーグはMcCutchenに頑張って欲しいでしょうが、McCutchenがぎりぎりまで下がってきて最終戦までハラハラなんていう混乱もちょっと見たいですね。