NBAオールスター前の前半戦最終日、New York Knicks@Miami Heat、Miamiが試合開始直後から飛ばしまくり、またPG陣がJeremy Linに仕事をさせず。事前にHeatの圧勝の予想はしていたものの、予想以上の内容での圧倒ぶりで、東の王者がその存在感を全国に示した見ていて感嘆することしきりの試合に。二人のMVP候補=LeBron JamesとDwyane Wadeのモノが違う怒濤の速攻にはKnicksは手も足も出ず。Heatは全国放送の試合で強い、という話がありますが、その印象をさらに強めた試合になりました。

内容ではHeatの強さ能力の高さが目立つ中、それでもハーフタイムで僅か4点差Heatリード。前半だけでKnicks側は15ターンオーバー(うちLinが6つ、Amare Stoudemireが同じく6つ)とHeatの圧力を外で内でさんざんに受けていたにしては全体ではなんとか試合になる範囲に収めていたわけです。印象度ではファーストブレイクの鬼のようなHeatの圧倒的な火力の勢いがすごかったのですが(但し見た目の派手さほどには得点は決まらず、これも点差が開かなかった原因)、ベンチ組対ベンチ組の時間帯にKnicksが差を詰めて点差を開かせなかったのが前半。ベンチ組ではJ.R. SmithとSteve Novakが加点、特にSmithの方はミドルでも切れ込んでもいいところを見せるなど今後のKnicksの攻め手になりそうな動きがよく出ていたのが好印象。


さて話題のLinですが、最終スタッツは出場34:19、1-11、9得点3アシスト8ターンオーバー。先発し始めて11試合目にして初の一桁スコアでHeatの前に惨敗という結果が数字で出ています(出場時間が初先発以来で大楽勝だったSacramento戦以外では最短でもありましたが)。11試合目にして遂に壁に当たったことになります。これまでなら入ってたようなゴールリムの上を転がって外れるショットが目立つハズレの日。バスケットボールにはそういう日はあるものですが、この日の場合はHeatのディフェンス(PGのタイトなD+Joel Anthonyのブロックの脅威)にしてやられてリズムがまったく掴めないままになったというのが本当のところでしょう。

一般に批判の多いターンオーバーの多さについては、この試合以前から数字上は目立つところ(先発11試合で8TOは実に四度目)でしたが、私は大きな問題ではないと感じていました。初先発から○試合でNBA史上最多ターンオーバーという記録は毎試合のように書き換えてきたLinですが、ターンオーバーの出方が悪いとは言えないと見ていたからです。ギリギリのアシストを狙ったパスが通らなかった結果であって、攻めでのターンオーバーは減らしたら通った場合のアシスト=チームの得点も減るわけですから、数合わせのためにターンオーバーを減らせ減らせというのはスタッツに囚われた悪い批判だろうなと。Assist/Turnover ratioというPGの効率の指標がありますが、それを考えればLinのターンオーバーはそれほどには悪くない。中に突っ込むことで失敗することも、別のポゼッションでは相手ディフェンスの内へのつぶれ効果もあって悪くないと試合の流れからは見えていたわけです。この日のHeat戦までは。

この日はHeatは高い位置からLinにダブルチーム。高い位置でのLinへのダブルチームは先日のDallas Mavericksが仕掛けてきた(試合前に「Lin対策は練ってきたぞ」と豪語していた)手なのですが、Dallasは失敗、Miamiは成功。違いは、というとDallasはダブルのヘルプに入った選手がダブルについたままで深追い気味(といっても3秒とかですが)だったのに対して、Heatはヘルプが素早く強い圧力でダブルに付いてpick-and-rollは消しても、さっと元の持ち場に帰る(=他の3人のディフェンダはローテーション不要)。試合のテンポが速かったこともあってか、そこを見切れないLinが早くボールを離す場面が多くアシストも伸びない、チームの攻め手も限られるという展開に落ちていったように見えました。ターンオーバーもスティールでボールを失ったりオフェンシブファールで失った分など、今までのように攻めのアシストの代償というのではないターンオーバーが多かったのがこの日の特徴。つまりこの日はアシストも少なかったがニア得点であるアシスト狙いの失敗すらも少なかったというのが、単純なターンオーバーの数よりも問題だったと言えます。

Linが今日はダメな日となって後半はCarmelo Anthonyが復帰以来初めてボールに多く触る試合となりましたが、得点こそ19点チーム最多にはなりましたが効率は悪く、手詰まり感は強かったです。

Linは試合後に一切言い訳せず。潔くてそれはいいでしょう。ま、若い選手でもあり次回に期待ということになりそうです。10試合もやっていれば悪い日もあります。それに相手はNBAベストディフェンスのチームですし。そこから何を学んでこれからに繋げられるか、ですね。

Heatとは4月15日に再戦がスケジュールされています。レギュラーシーズン追い込みの時期でたぶんHeatはその頃までにトップシードを固めているころ、Knicksはその頃まだプレーオフ進出を賭けて奮戦しているころでしょうか。場合によってはプレーオフ一回戦のプレビューの試合になるかもです。


対してMiami Heat。勝利にも試合後も歓喜の色もなく全員が淡々としたもの。試合開始直後からの猛烈な勢いとは裏腹なクールなマスコミ対応に終始したあたりに「格が違う。目標が違う」という強い静かなる自負を感じます。