相変わらずなのである。米サッカー協会は監督始め目標は一次リーグ突破が目標と言うし、または初戦であるチェコ戦以外眼中にないという言い方をする有力選手もいる。話だけ聞いていると世界ランクが4位まであがった今回も、前回日韓のころや米W杯のころとまるで変わらないんですが、どうにも真意を隠しているように思えるのです。

関係者が一様に箝口令を敷かれたように希望的観測発言皆無なのに対して、唯一目立つ場所でアメリカの今大会での躍進を口に出したのが元米代表で代表通算得点記録をもつEric Wynalda。現MLSの中継解説者。
先日の放送で米代表の準決勝進出を言い切りましたね。この手の高い結果を予想する発言が掲示板の野次馬レベル以外ではまったくないだけにちょっとびっくりするほどの明言。たぶんアメリカチームの本音やムードを現在協会の外にいる自由な立場のWynaldaが代弁したものなのだと思っています。

アメリカ実は今回勝つ気満々なのではないかと思わせる傍証はいくつかあります。
一番目立つのは以前も指摘しましたが代表によるドイツでの予行演習二試合のひとつをわざわざ@Dortmundで行った事。
この点あまり誰も(米側掲示板レベルでも)指摘されていないのですが、一次リーグでは米代表はDortmundでは試合の予定がありません。Dortmundで試合があるとしたら一次リーグを二位で通過したときにF組のトップと対戦するときなのです。高い確率でブラジルとの一騎打ちが行われる場合の決戦場。

リーグ戦予定の会場など会場はいくらでも選べたのに敢えてDortmundを選んだからには、それをセットした米サッカー協会の目標がリーグ戦突破ではありえないでしょう。口に出して言わないだけで心の底にはブラジルを叩いてのベスト8進出を描いていること相違なし。
トーナメント一回戦を突破して日韓のときと同様ベスト8進出と言っても、強豪揃う今回のE組を抜け出しさらにブラジルを撃破となれば同じベスト8でも価値がまるで違う。(日韓のときのトーナメント一回戦は同地区で何度も勝っているメキシコ相手だった)

1994年の米開催のW杯でもノックアウトラウンド一回戦で常勝ブラジルと対戦になったけれど、あのときはグループ3位での通過でどこと当たるともしれず、またブラジルとの対戦がアメリカ独立記念日の7月4日だったことで試合前のムードは弱小アメリカがロッキーのテーマに乗って最強チャンピオンに挑む一戦。大番狂わの予感だけが売り物のハリウッド映画的取り上げ方しかできなかった。気分は盛り上がったものの、実際には一方的に攻められ続け、それでも72分まで0-0だったあの試合。あれから12年。アメリカは本気で一発かませると自分たち自身を信じられるまでに強くなってきてるわけですよ。

ちなみに米代表がドイツ国内で行った予行演習試合もう一試合は@Kaiserslautern=一次リーグ二戦目イタリア戦の会場でもありますが、E組をトップで突破した場合の初戦の会場でもある。つまりドイツ国内での予行演習の二試合はどちらもノックアウトラウンドの会場を採用した。一次リーグ突破ではなくベスト8進出に意欲満々なのではないでしょうか。


海外メディアで取り上げられることにも警戒感を示している。
これは確かジャパンとのフレンドリーの後の記者会見だったんですが、珍しくいたブラジルの記者が「トーナメント一回戦で当たる可能性のあるブラジルについて」という質問をしたときにArena監督完全にはぐらかして「ブラジルと対戦できるならリーグを突破したということでそれはうれしいことだし成功だ」とかまったくブラジルで記事にならないような受け答え。対ブラジル沈黙は米サッカー協会的に誰に訊ねても統一されていおり、箝口令で絶対一発狙ってるんだと思う。

また他国がまだロースターを発表していない一週間前から代表合宿を開始したんですが、これがマスコミも入れない完全非公開。理由は「練習は見せるものではなく鍛錬の場」という素っ気ないものですが米サッカーのように人気で発展途上のスポーツからしたら絶好の宣伝機会を逸してまでのマスコミも完全排除という判断は、その本気度がひしひしと感じられるものと言えます。戦前の宣伝より現物の白星や金星で勝負ということでしょう。
ちなみに協会によれば取材申し込みは日韓大会でのベスト8のときの倍の数来ているそうです。


2010年のW杯制覇を長期目標にして過去十年強化を続けてきた米サッカー協会が最近その目標の話を一切しなくなったのもアヤシイ。もし今回、次回ではなく今回高い目標を狙っているとしたら「2010年W杯制覇」なんてことは今年のチームの士気を落とすことになるから言わないでしょう。なのでアヤシイ。

さらに意外なところから出てきた傍証がこれ。ブッシュ大統領がドイツの新聞のインタビューでサッカー米代表の活躍に触れているんですねぇ。もちろんこの時期のドイツ向けリップサービスとしてサッカーに興味があるふりをするのは政治家として当然かと思いますが重要なのは「米国が良いチームを持っていることを聞かされた」と述べている点。大統領がサッカーなんぞに興味があるわけはなく、お付きのアドバイザーから話題のネタとしてインプットされているだけとは思うんですが、そのアドバイザーレベルで米代表、実はけっこう勝つかもという認識がなされているってことなんですよねえ。
サッカー協会はもうかたくなにグループ突破としか目標を口に出さないのに大統領アドバイザが独自に?そういうインプットをしちゃう。ただでさえ今、任期中最低支持率に喘ぐブッシュ政権、もし米代表が活躍したら尻馬に乗ってやろうぐらいの計算はするわけで、少なくともそういう期待をアドバイザレベルで持ってるという事実が垣間見えるわけです。四年前ならこんな発言はあり得なかった。

もうひとつ。ロースター発表のときの問答で、Arena監督が次回や将来のことは一切考えないでいま勝つ事だけを考えて人選したということを強調していたのが目立ちました。
一般に名前の売れたFreddy Aduは選考招集も一度だけで落選は既定路線だったのはともかく、当落線上の争いでは常にベテランを優先起用した感が強い。それだけベテランびいきにしてもロースターの半数がW杯初出場の選手で占められており、もし将来の強化と両にらみで生きの良い選手を選んだらもっと若返ったと思いますね。そうしたとしてもチームとしての力量はほとんど落ちなかったはず。
それだけの層の厚さが出てきた米代表。それは選ばれたベテラン勢も感じたはず。逆に言えばベテラン勢にとっては今回がラストチャンスというメッセージとも受け取れる選考でもありました。

まあ現状の世界ランク4位だの5位だのはいくらなんでも持ち上げ過ぎでしょうが、世界のどことやっても「絶対勝てそうにない相手」がなくなった、そういうレベルにまで来たのは事実。
協会の目論み通りブラジルを下すような事態になれば世界のサッカー戦線にアメリカ在りを強烈に宣言することになります。見てみたいです。
(一方まあサッカーぐらいアメリカが弱くてもいいんじゃないかという気もするんですけどね)