またO.J. Mayoの話です。前回までの話はこちら
地元の強豪校Cincinnatiへの進学が前コーチBob Hugginsの事実上の解任で頓挫し、その後はまったく進学候補の学校名を挙げなくなったクレバーなMayoくんですが、それだけにさまざまな憶測が乱れ飛んでいます。

まずBob Hugginsの再就職先であるKansas Stateへの進学の可能性。
元々Hugginsとは親交があり、一説には心酔しているとも言われます。K-Stateはバスケでは弱小校。Hugginsはこの弱小校に新しい常勝チームを土台から作ろうとしているところ。MayoのようなAll-Americanの選手が行くと言えば学校上げて大歓迎、初年度からがしがし使ってもらえることも確定的。もちろん高校の同僚で親友のWalkerも問題なく同時に受け入れられるでしょうしコンビを継続することになるでしょう。

ちなみにその同僚Bill Walkerは今シーズン平均21.7得点、ジュニア(=日本の高校二年相当)の全米トップ10に選出されました。これはMayo始めAll-American 1st~3rdチームに選ばれた3名は除いて10人。シニア=最上級生が卒業して抜ける来シーズンにはMayoとともにAll-American候補の選手というわけです。
まあO.J. Mayoの場合は昨年度日本の高校一年相当時にもAll-Americanに選出されていて、つまり下級生として二年連続All-Americanに選ばれている抜群の実績、怪我でもなければ三年連続All-Americanというまれに見る栄誉は手の届く範囲内ということです。

K-Stateの所属カンファレンスは六大カンファレンスのひとつであるBig XII。今年NCAAトーナメントで2位シードだったTexas, 、名将 "General" Bob Knightコーチ率いるTexas Tech, Missouri, Oklahomaといったところがバスケでは有力校。大学最高峰のBig EastやACCからは一歩グレードが下と見なされるでしょうがその次の全米二番手グループと言えるカンファレンスで、K-Stateからみれば対戦相手の質的には問題なしカンファレンスで勝ちこめばそのまま全米でも上位と見なされるレベルです。逆にBig EastやACCのように厚いカンファレンス内の強豪校たちに包囲されて前進を阻まれるほどのレベルの高さでもない、実にお手頃な感じ。
数年前に元Indianaの名監督だったBob Knightが就任して以来いきなりTexas Techが勝ちだし、一躍カンファレンス内の有力校と目されるようになったように、名将Hugginsコーチ+MayoでK-StateがBig XIIの優勝争いに絡んで全米に名を売る可能性は期待できるわけです。


もうひとつ一部から有力視されている進路がD-League入り。NBAの下部組織である選手養成用のリーグで、NBAが指名したもののロースター入りできなかった選手やドラフト漏れした選手などがNBAデビューを目指してせめぎあうマイナーリーグ。ルールは完全にNBAルール準拠でNBAへの即戦力を育てているというか補充選手を保留しているという感じの場。田臥勇太の所属しているAlbaquerque Thunderbirdもここのチーム。

NBAの昨年の規定変更で高校生が直接NBAドラフトにエントリーすることができなくなったのですが、下部組織であるD-Leagueへの加入はその規定外で、高校生が大学に進学しない場合の受け皿になることができる仕組みになっています。少なくとも現時点では。
現時点ではと断るのは大学に進学できない出来の悪い高校生の迂回先になる可能性があり(=最初から大学を目指さず勉強しないやつが出る。教育上よろしくないというタテマエから)遠からぬ将来にD-Leagueも高校からの直接の選手を受け入れるのを止める可能性があるから。

Mayoの場合はその手の問題からは学力的にも問題のない選手(と報道されている。それにしても高校生にとって自分の成績が世間に晒されるのはあんまり気分のいいものではないでしょうが)ではありますが、どうせNBAの規定を満たすためだけの一年しかカレッジでプレーしない可能性がかなりあり、とすれば下で述べる巨大な利点が存在するだけにD-League行きもありえなくないというのがD-League入りを予想する向きの論拠。

但しこの場合の問題はMayoご執心の同僚Walkerと同じチームに入れる保証がないという点。
またより根本的に重要なことは、D-Leagueは世間への露出は低い(ゼロに近い)のに、こと個々の選手のレベルでは大学レベルより遥かに上であること。チームワークがどうとかよりもNBAを目指して全員がしゃかりきになって目立とうとするリーグであるためMayoが行ったとしても出場機会が保証されないし、いくらAll-Americanの精鋭とは言え4歳以上も経験の違う実力派たちと競う切磋琢磨の場で活躍機会が実力で確保できるかどうかも怪しい。
という理由で私はD-League行きはないと思っているのですが。

一年だけだとしてもカレッジに行くほうが露出度では圧倒的に有利。カレッジの試合は大量にTVに載るし特にK-Stateのような学校に行くとなるとTVもクローズアップしやすい。March Madnessまで辿り着けば知名度でも一気に全米レベルへ到達。D-Leagueでは基本的にTV放送皆無に近くまさに実力だけでドラフト前に評判を高めて這い上がらないといけない。
またD-LeagueはNBAの直属なのでプライベートな細かい素行の問題などが事前にNBA側に漏れやすいと推定でき、つまらないことでドラフトでの評価を下げやすいという問題もある。

他方、D-League行きの最大メリットは、マイナーリーグとはいえプロ選手なので「堂々靴屋と巨額契約をしてもよい!」という点ですね。
大学選手はどんなスター選手であろうと一切の金銭メリットを受けることができないし、事細かくNCAAからチェックを受ける立場になります。フットボールではUSCがいま危機ですがまったく同じようにこまかーいところまで見られる。
Mayoにとってはちょうど頃合いもいいのはアディダス(リーボックを合併取得)とナイキの二大勢力がせめぎあっている今、青田買い合戦でナイキとアディダスによるMayo争奪戦が起こる可能性があるんですな。Kobe, Shaq, Iverson, Garnettといった既存のスター選手はすでにベテランとなって若い層へのアピール力が落ちており、ナイキもアディダスも次世代のスター選手はいくらでも欲しいところ。特にMayoの場合まずまずハンサムと言える顔立ちであり、現時点で人気実力話題性でNBAナンバーワンなのに残念フケ顔のLebron Jamesを駆逐する可能性があるのも魅力。

この辺はまだ高校二年であるMayoの場合一年先の話なので業界の様子やオファーされる金額とを見比べて大学かD-Leagueかということになると思います。
まあウォッチする側としては大変興味深い対象でもありますね。