やー。なかなか今年はおもしろいドラフトになりましたね~。

まあNFLドラフトっていうのは多種多様なチーム側のニーズと、これまた多種多様なポジションの選手たちの才能比較がからまって、さらにドラフト権の取引の駆け引きと、ハマれば楽しいんですが手軽には楽しみにくいイベント。でも今年は比較的たのしさがわかりよかったんじゃないかな。
昨日別項で書いた鉄板と思われた1位のRB/PR Reggie Bushが一転、どこへ行くかわからなくなったり(最終的にはNew Orleans)、Bushの同僚QB Matt Leinartが予想以上に長々と売れ残ったり(Arizona Cardinals)カレッジで名の売れた選手がらみで動きがあったから。

最終的にはあまり派手なドラフト権のトレードはなく結果だけ見ればあれですが、リアルタイムで見てると4位のJetsがBush盗りに2位指名権ゲットを目指してトレードに動く具体的情報も飛び交って会場もざわざわしてくるし、またどんどん他の会場への招待選手が売れて行く中売れ残って苦悩の表情がだんだんに濃くなって行くLeinartウォッチ、また親に捨てられ不遇な少年時代からドラフト6位の座に辿り着いたTE Vernon Davis (San Francisco 49ers)の感涙など悲喜こもごもの現在進行形ドラマが展開されていく。さまざまな過去のいきさつも絡んで多層的な感想が大量に湧いてくるのもこのイベントの特色ですね。いやよかった。

New OrleansはBushを売り飛ばそうという意図は十分にあったと思いますが、Jetsのオファー(1巡目x2+3巡目)でも全然足りないというのはちょっと吹っかけ過ぎでは?まあNOの場合、ハリケーン復興で市が球団が望むレベルの新スタジアムを建設することになるのかどうか微妙な状況で、即座にチームの顔になりうるBushは新スタジアム公的資金獲得への後押しにもなるから幅広い層が理解できるポジション=RBのスーパースターはフィールド外でも使える男でもあるわけです。
またはNew Orleans市が都市機能の再建にまずは資金を振り向けスタジアム後回しというという決定をした場合(それは至極まっとうな考えだとは思いますが)にLos Angelesへの移転も噂されています。現在全米第二の都市Los AngelesにはNFLチームがありません。もし移転を敢行する場合にLA(母校USCの地元)で絶大な支持を持つBushはその面でも強力な人材。
つまりフィールド上での強みだけでなく、フィールド外のチームの経営的にも多大なメリットが見込める選手というわけです。

まあそれでもつい昨日まではNOの首脳部はRBを一巡目で指名することなどまったく頭の隅にもなかったはずで、この辺の頭の切り替えの速さっていうのは、アメリカでの会社首脳部の意思決定の速さとイメージ的にかぶりますね。

結果的には1位2位が予想と実際が入れ替わっただけで3位指名権以下のチームにとっては想定内での展開。4位JetsもBush盗りでじたばたしたものの、それはそれ、昨日以前の元々の予定通りにFurgusonを獲得、まあ満足というところでしょう。

3位のTennesseeがQBを指名するのは明白だったもののVince Young(Texas)とMatt Leinart(USC)のどちらに行くかは議論が別れたところでしたが、結果はYoung。
Tennesseeのオフェンスの責任者はNorm Chow。このひとは2004-05シーズンまでUSCのオフェンス責任者だったひとで、つまりLeinartとはすでに大学で二年連続全米制覇を成し遂げた仲。ChowとヘッドコーチのJeff FisherはLeinartに傾いていたのだけれどオーナーやGMがYoungを求めた。つまりチーム首脳部で現場組と背広組の主導権争いがあったわけで結果はYoung。
オーナーから見ればLeinartを獲得した場合、旧知のLeinartとChowが癒着するのは目に見えている。二年間やってきた馴れたオフェンスを展開すること確実。そうなると将来オーナーが攻撃のパターンに不満を唱えたり、さらに進んでChowを切ろうという状況になったときに不測の事態(多額投資して獲得したエースQBがチームの方針に異議を唱えて云々とかトレード要求とか)が予想できることになってしまう。つまりオーナーの現場組への圧力がかけにくくなる。これを嫌った可能性があるわけですね。
もちろんその辺の事情を割り引いてもVince Youngは魅力的な選手であり、まあこれで皆ハッピーになるべきでしょう。

ちなみにTennesseeは2巡目でRB LenDale WhiteをUSCから獲得。Whiteは1巡目下位での指名も見込まれていたのに2巡目まで残っていた。これでUSCのスター選手は軒並み予想以下の順位での指名となってしまいました。
まあ目立たないながらUSCのラインメンなどが順調に売れた(計7人)1日目だったのでUSCにとっては決して悪いドラフトではないのですが、スター選手の評価がいまひとつだったのはどうしても目立ってしまうでしょうね。

Miamiからは私の予想あたりでCB Kelly Jenings(Seattle Seahawks)が1巡目指名、NFL記録である連続1順目指名選手の輩出が12年連続に伸びました。
Miamiは昨季はチームも途中で息切れ、迫力に欠け、全国区で名の知れたスター選手もゼロにちかく、ドラフト候補選手も数字的にかなり弱いとか背が低いとかいまいちな選手ばかりという前評判でしたが、それが結果は1日目で6人指名を受けるなどやはり強い。CB Devin Hester(Chicago Bears)などは一度もMiamiで定位置を獲得できなかった選手なのに2巡目で指名が来てしまう。結局またこういうドラフトでの強さがプロ指向の高校の好素材をこの学校に引き寄せることになるんですよね。