この時期は新学年の始まりであり夏の終わりです。アメスポで言えばフットボールシーズンの開幕です。アメスポジャンルNo. 2人気のカレッジがNo. 1にNFLに一週間先行して今週木曜から開幕。そのフットボールシーズンの到来前にニッチを狙って運営されている各種マイナープロスポーツがシーズンを終了しようとしています。野外ラクロスMajor League Lacrosse (MLL)は土曜日に南部アトランタ郊外で優勝戦開催しました。MLLの強豪Denver Outlawsが悲願の初のMLL制覇を遂げています。試合を通して劣勢でまた負けるのかーという展開だったのを終盤に一気に追い上げての大逆転勝ちで初優勝。Outlawsは集客の面でもフィールド上の成績でもMLLの最優良チームですが、レギュラーシーズン14戦全勝で臨んだ昨年もリーグ拡張でできて間もないCharlotte Houndsに苦杯を舐めさせられました。チーム創設以来全てのシーズンでプレーオフに進出し、四度も優勝戦にも進出しながらどうしても優勝に届かなかったのが五度目の優勝戦で遂に初制覇となりました。好試合で大変楽しめました。動員は8000人超、MLLの決勝としては史上二位の動員を記録。場所が中立地で出場チームの地元から遠く両チームのファンの動員が多く望めない状況でこれだけのラクロスファンを集めたのは立派でしょう。MLLがここアトランタに新チームを作りたがっているのを大きく後押しする興業になったと思われます。放映はCBS Sports Network。 ちなみにアトランタは大都市圏ながら男子サッカーMLSが参入を決断しきれない都市。女子サッカーでは過去のリーグではチームがあったのですが、現行のNWSLはアトランタを諦めています。そういうところにラクロスが先に入り込めるのかどうか。
その女子サッカーNWSLはこの週末にプレーオフ準決勝を開催。昨年創設年の優勝チームであり、各国のエース級を揃えたPortland ThornsはFC Kansas Cityに完敗で決勝戦進出ならず二連覇失敗。この試合は実によかったです。Kansas Cityの方は前線にAmy RodriguezとLauren Holiday(旧姓Cheney)と米女子代表を二枚揃えています。とは言ってもAbby WambachやAlex Morganといった米代表の顔、さらには若手のSydney LerouxやChristen Press辺りの生きの良いFW陣やCarli Lloyd辺りにすら代表での存在感では下回るRodriguezとHoliday。この二人がクラブでは実に伸び伸びと活躍していて良いです。Holidayの方は昨年NWSL創設年のMVP。代表ではAbbyその他へのお膳立て役が多かったのが自分のチームを得て開花した感じでした。A-Rodの方は昨年は出産で全休、今年から現場復帰なんですが二人とも、そしてチーム全体もよく走ります。ピッチ上は華氏100度(38℃)を超える中、よく走れるなあと感心するぐらい走ります。先制点となったA-Rodのゴールも中盤ピッチの右端からゴール反対側まで一気に斜めに走りきってフリーになってのもの。そこへきれいにスルーパスがつながりました。またチーム全体もパスがつながって後ろからのビルドアップも何度も見られたりチームとしてこなれてるなあという感想。スター軍団のPortlandをチーム力で蹴散らした形に。酷暑の中、前後半とも給水タイムがとられていましたが、ちょっとやそっと休んでも暑いだろコレという状態でも他の場面でも手を抜かない。立派です。プロ根性あるなと。決勝は次週。ESPN2での放送でのなかなかの好試合。どれぐらいのスポーツファンにアピールできたでしょうか。
女子バスケのWNBAは通常年は10月までプレーオフが続いて、男子NBAの開幕直前まで試合があるんですが、今年は女子バスケ世界選手権があるそうでそれに合わせて早めのスケジュール消化でいまプレーオフたけなわです。シーズンは短いのですが試合数は例年と同じ。
以前に紹介したLFLランジェリーフットボールは経営の混乱があり米国内のリーグ戦はほぼ崩壊状態です(話すと長くなるので省略)。
アメスポ最強フットボールシーズン前に手じまいするこれらのニッチプロスポーツとは別にNASCARやゴルフはフットボール開幕後もシーズンを継続します。アメスポ最激戦の時期でも興業を維持できる故にゴルフやNASCARは準メジャーと認識されるという面があると思います。男子サッカーMLSもその準メジャー型のシーズン構成。週一のESPN系での定時放送は次週はカレッジフットボール開幕週の煽りで一試合も放送がないなどTV放映は報道での扱いは大きく低下しますが、地歩を固めています。扱い低下する直前となる今週末はMLSの最大のライバル対決であるSeattle Sounders@Portland TimbersがESPN2で放映。これも良い試合で見て大満足。現在西でトップ争いのただ中であるSeattleは米代表エースClint Dempseyとナイジェリア代表Obafemi Martinsの二人が見事にかみ合って今季はゴールを量産していますが、この日もこの二人の息がぴったり合っての好機多数。そして必殺カウンターではSoundersは4人も5人もフルスピードで自軍ゴール前から相手ゴールまで殺到するなどでエンタメ度の高いサッカー。アウェイでライバルPortlandを4-2で叩きのめしての快勝。Timbersも敗戦濃厚な中でも奮戦して意地のゴールが出るなど好試合でした。MartinsはMLSにとっては大変な拾い物になった好選手ですね。Dempseyとの息の合方は出色です。MLSプレーオフの時期はフットボールシーズンたけなわの上にNHL、NBA、カレッジバスケと次々と強力コンテンツがシーズン開始してくる時期でMLSを見ているのはマニアだけになるでしょうが、それでもSeattleが今年どこまでやれるのかは楽しみです。ということは私はマニアなんでしょうか。
試合終盤に逆転再逆転の好試合となった全米優勝戦の方は別項でも触れた荒れた都市部のチームであるシカゴの優勝に。選手全員が黒人選手のチームがLLWS全米タイトルを獲得したのは30年ぶりの事なのだそうです。
人種ネタは実にセンシティブなのでよほど語りたい場合でないとマスコミは触れないんですが、今回は野球の都市部での復興という観点で語ることにしたようです。LLWSでの都市部チームの優勝がそのまま近い将来の黒人選手の競技人口増加や都市部での野球の復活に直結するとまでは言えないです。が、30年前には確かに都市部の少年達も野球をやっていて強かったのが郊外のチームに全く敵わなくなった過去30年の歴史が、MLBからアメリカ人黒人選手が漸減していった時期に重なっているのは事実でもあり、偶然ではないのかもしれない訳です。今大会でのシカゴチームの活躍で都市部の運動能力に恵まれた黒人アスリートが再び野球に戻って来るのか。きっかけにはなるのでしょう。もし戻ってきたとしてもそれがMLBレベルで目に見える変化として現れるには10年単位の長い時間はかかるのでしょう。一般人には目に見えない中で草の根レベルで野球再興に尽力してきた努力が今大会のシカゴの優勝で一つ見える形になったということですね。
今回の優勝チームは運動能力や体格で明らかに高レベルだったのは確かですが、それだけでなく打撃守備ともによく鍛えられた好チームでした。指導者にも恵まれているのでしょう。まだ今なら都市部にも野球を若い頃にやり込んだ指導者人材がいるという事が想像されます。そういう人材がいるうちにMLBが資金投入して復興の手を打てたということか。野球にとってはバスケにアメスポのNo. 2の座を奪われないで済むかギリギリに近いタイミングだったのかもしれません。
NBAオールスター級をずらり揃えたバスケ米代表の調整試合が進んでいます。ブラジル、ドミニカ共和国を蹴散らし、今夜はプエルトリコ戦。本番のスペインでのW杯は8月30日が初戦です。米代表から大量に離脱者を出している件もいろいろ語りたいところですが、今日は日程のことを少し嘆かせてください。なぜに8月30日からの開幕なんでしょう。もちろんスペイン側やFIBA側にもそれ相応の理由があるんでしょう。が。アメスポ側から言わせて貰えばなんでフットボールシーズンの開幕に重ねてくるんだよ…という。いまだとLLWSが関心を集めていますし、次週の開幕はもろにカレッジフットボールの開幕週に、決勝トーナメントの時期はNFLの開幕・第二週にバッティング。サッカーW杯が終わったあとはアメスポが夏枯れでヒマだったのであの2~3週間の間にバスケW杯やその前段のプレ大会調整試合があれば十分に楽しめたはずなのに。アメリカ側がスケジュールに関われるなら必ずそうしたことでしょう。
アメリカ一国の事情なんぞ知らんという海外の意見もあるでしょうが、もしNBAが所属選手の供出を拒めばバスケの国際大会など五輪でもW杯でも商品価値は一気に地に落ちるわけです。米代表だけでなく他の各国代表でも中心選手はNBA所属なのです。出場する選手側はお金の面で大きな利益があるわけでなく出場しているわけです。それが時期が悪くてせっかく夏休みをキャンセルして出場しているのに露出が完全にフットボールに隠れてしまう中での出場に意味があるのか、と選手達にすら思われたらFIBAも自分のクビを絞める行為だと思うんですが。そもそもNBAオーナーは選手を出したくないのです。選手達の熱意で出場できているのに。またスペインの細かい国内事情は知りませんが、スペインだってサッカーが開幕したあとの開催が良い開催時期なんですかね?以前に教えていただいたんですが欧州スポーツは伝統的に利益最大化に疎い部分があるとされますが、これもその現れなんでしょうか。
そのひとつの解答が昨夜もMo'ne Davisのフィラデルフィアのチームの追い上げを振り切り土曜日の米国決勝に駒を進めたシカゴのチームのようです。話題性ではMo'neに譲りましたが大きな目で見てアメリカ野球全体にとっての意義はこちらの方がインパクトがありそうです。
都市部の、というのは婉曲な表現で、実際にその意味するところは貧困地区または犯罪多発地区です。そういう地区からフットボールやバスケットボールでは途轍もない運動能力の黒人選手が飛び出してくるものなのですが、それがMLBでは減る一方。カリブなど出身の黒人選手はいまも多く活躍しているため肌の色だけではパッと見黒人選手が減っている感じはないでしょうが、アメリカ人の黒人選手は間違いなく減っているし、パワーヒッターやパワーピッチャーとなるとさらに少ないです。
他方ではチケット価格の大幅アップなどによりMLBが大衆娯楽の地位から自ら撤退(値上げで単価上昇=入場売上全体は伸びたがファンの裾野は狭まった状態)しこの面でも都市部の住民から野球は遠ざかりつつあったと言うのがアメリカ野球の現状です。もともと野球の産業としての強みはファンの裾野の広さにあったはずですがそれが大きく損なわれた状態です。産業構造の転換ということになりますが、その中で切り捨てられたのが低所得層ということです。
都市部での野球復興というテーマはMLBも認識していて静かに予算を割いていたのです。それがやっと見える形で出てきたのが今回のシカゴ少年チームだ、ということになりそうな訳です。LLWSでも大半は郊外型のチームであるのに混じって珍しいオール黒人選手。地区もいわゆる都市部であります。そして運動能力が見るからに高く、他チームを凌駕しています。ああこれがここ20年フットボールにとられてしまっていた人材なのかなと思わされる子たちなのです。
昨夜の試合でも右翼手が運動能力のある子で、ここへ飛んだ相手の打球を再三好捕。さらにはタッチアッププレーでのダイレクト本塁送球。少年野球ではライトには上手くない子が入るのは当たり前の措置で、小柄な子がやっている場合も多いのですが、このチームだけは右翼手も大きくて強い子が入っている。あの子がいなかったらこの試合はフィラデルフィアの勝ちだったというぐらいの守備での厚みがある活躍でした。
Little League World Seriesのスター=Mo'ne DavisがSports Illustrated誌の最新号の表紙になって史上最年少SI誌表紙アスリートになりました。以前の最年少=天才テニス少女Tracy Austinを数ヶ月差でかわしての史上最年少更新とか。ちなみにSI誌では16歳当時のMike Troutや17歳のLeBron Jamesも将来の超有望アスリート・スター候補として表紙になっているそうです。ローティーンでの男女の成長差もあるので最年少争いは女子の方が優勢でしょうが、16歳当時にTroutを表紙抜擢したSI誌、なかなかやってくれます。
ちなみにMo'neの二度目の登板は2回1/3 6奪三振 自責点3 被本塁打1。強打のネバダ打線に捕まりながらも連続三振で打線の中軸の大きな男子を次々空振りさせるところで観客歓喜。動員は25,000人超。これ、同日のMLBのPhilladelphia Philliesの主催試合の動員とほぼ同じですね。3回途中で交代したのは投球数制限の規定を睨んで土曜日の決勝(もし今日木曜日の敗者復活戦に勝てればですが)に進んだ場合に三度Mo'neが登板できるようにということを考えての降板でKOではなかったです。